第6.7号合併号 NEWSLETTER 大阪地域医療ケア研究会 2004年5月25日発行
2015年の高齢者介護 〜高齢者介護研究会報告より〜
香取 照幸 氏(厚生労働省老健局振興課長)
小規模多機能ケアのコンセプト
在宅の生活を支えるために、その人に必要なサービスを一つのポイントから提供できるように機能集積していくという考え方です。小規模多機能の基幹的な機能は通所の機能だと思います。デイサービスがベースになって、そのデイの機能を多機能化していくことによって、高齢者のライフステージの変化に応じたサービスを次々と継ぎ足していくというイメージになると思います。
小規模多機能の議論をしていると、複合施設とか総合ケア施設というイメージで捉えている方がおられます。一番の違いは、高齢者の生活圏域で完結していることと、あくまで在宅を出発点にして可能な限り在宅で支えられるように、いろいろなサービスを時系列的に継ぎ足していくという考え方です。
施設の新たな展開
施設についてはいくつかの事がいわれています。(1) 地域生活の支援、(2) 個別ケアの実践(ユニットケア)(1)(2)を前提に施設機能を再整理しましょう。
地域の在宅サービス拠点ということを施設側から考えてみると、どういうことになるでしょうか。
例1)施設が小規模・多機能サービス拠点を施設のリソースを使って展開していき、拠点を整備していく。
例2)現在の1人8uの4人部屋を、1人13uにユニットケアに変えていくとなると、増築増床をしなければ定員が減ることになります。50床特養を改修した場合、3ユニット30人になり、20人余ります。その余ったユニットを地域に出し、小規模・多機能拠点に併設し、本体施設と一体的に運営する。
例3)施設機能を出さずに住宅機能を併設し、そこを小規模・多機能サービスの拠点とする。
このような形で施設の機能を地域に出していき、地域で最後まで生活できるような拠点をつくっていこうという考え方です。
新しい「住まい」第三類型
自立生活のための環境と24時間の安心・生活支援の2つの要素があります。
1.ハード・ウェア(自立生活のための環境)
住宅として最期まで住むことのできるハード・ウェアが用意されています。(バリアフリー・緊急通装置)
2.ソフト・ウェア(24時間の安心・生活支援)
生活支援のサービスがある。LSA(生活援助員)、緊急対応可能なサービスと連携しています。新しい「住まい」は「入院」「入居」するということで、「転居」する「住み替える」という考え方ができるような空間であるということです。
地域包括ケアシステム
小規模多機能や施設の地域展開という形で様々な地域のケアの形をつくっていくわけですが、高齢者を支えていくためには、介護サービス以外の様々なサービスを必要に応じて組んでいくことが重要です。介護保険の上にもうひとつ包括的なサービスをコーディネートできるスキームが必要になってきます。例えば医療との連携を考える。あるいは一般の福祉のサービスや生活支援のサービス、経済的な支援をどう組み立てていくかということが課題に挙げられます。
研究会の報告書では、地域包括ケアという考え方で地域全体で様々なサービスを、組み立てることができるようなシステムが必要ではないかということが提議しています。
まず中核には介護保険があり、ケアマネジャーと主治医を中心に高齢者のケアプランをつくり、ケアサービスを提供するパッケージがあります。これを支えるためには、ケアマネジャーを機能強化したり、支援するシステムが必要です。
さらに、個々の高齢者を支えるためには、介護保険とそれ以外のサービスをつないでいく必要があります。一つはケアの連続性ということで、高齢者の状態変化に対応した継続的なサービス提供が必要です。もうひとつは、介護保険だけでは十分ではないので、介護保険以外の様々な社会支援サービス(医療・福祉・保健)を組み合わせながら提供するということです。
このような大きな広いステージの中で様々な専門職のネットワークが必要になってきます。福祉・介護の専門職だけではなく、様々な地域の人のかかわりとか民生委員やボランティアなどの多職種協働の場が必要になってきます。また、長期継続ケア・ターミナルの場合は、医療保険と介護保険によるサービスを組み合わせた多職種連携の形が必要になります。
現在、こういった全体をコーディネートできるような組織体制は作られていません。本来はそのために、在宅介護支援センターがつくられたのですが、残念ながら介護保険が導入されて以降、活発な活動が見られなくなってきています。在宅介護支援センターの機能をもう一度見直して、全体のサービス体系をきちんと組んでいくための拠点、中心的機能の役割を持つ機関として立ち上げていきましょう。
さらに、中心の介護保険を支援費変えると障害者の制度になります。地域全体の包括的なケアをするための調整や相談、連絡調整などのコーディネート機関として、高齢者だけでなく障害者・子どもの問題も含めて地域全体の相談を受けることができる拠点がまず必要だという議論になります。
地域包括ケアと市民参加
■地域包括ケアを支える市民の役割
・主体としての参加
ーNPOボランティア・生協・農協・WC
・地域ネットワークへの参加
ー地域住民組織(町内会・老人会等々)と
事業者・利用者との連携
・利用者・市民としての参加
ーオンブズマ・相談相談員
本格的高齢社会における地域包括ケア
従来の医療モデルから医療とケア(疾病構造・生活障害支援)を中心に変えていくことです。従って介護保険は医療プラス介護を一体的に提供するシステムとして、医療サービスの中に取り込んだものをつくります。在宅で長期の介護を支援するためには多職種協働が必要になります。従って長期的な多職種による介護支援を形にするためには、自立を支援するためのケアプランが必要です。医療においても在宅で支えるという話が進んできますから、在宅重視を視野に入れたプランが必要になってきます。
介護保険は医療と介護を一体的に提供します。地域に必要なサービスを地域の中で完結できる制度をつくりますと言ったわけですから、原点に返れば、医療と介護の一体的な提供をサポートするためのケアマネジメントと地域医療のシステムと介護のシステムの連携が必要となってきます。その意味でも生活の継続とケアの継続の保障が課題になってきます。
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