第4.5号合併号 NEWSLETTER 大阪地域医療ケア研究会 2003年10月17日発行
▼ 第二部 第2回セミナー(午後3時〜5時)
「地域で死を看取る 〜在宅ホスピスケアの実践に学ぶ〜」
講演:大頭 信義 氏(だいとう循環器クリニック院長
http://www.daitoh.or.jp/
)
終末期を家で過ごすための条件
必須条件として、以下のことが挙げられます。
1)患者自身が強く在宅を希望する
2)家族が納得し、受容する
3)医療や看護のサポートがある
あれば望ましいのは、
4)ある程度の苦痛の緩和が実現している
5)一定以上の住居環境と経済状態がある
6)いざという時の受け入れ施設がある
7)同居していない親族の強い反対がない
療養者が主人公になれるには
在宅の方が"心が癒されやすい"のは、自分自身の現状(病状)や運命(いつまで生きられるのか)を、つまり自分の存在を納得することができます。病院では一番ベストな治療をしていると患者さんは信じているが、再発を繰り返し体力が落ちていく事実(病状)を患者は納得(肯定)できない環境であると言えます。
患者が主人公になるためには、
1)最期まで支える介護者(家族・友人)
2)患者自身が選択するための豊富な医療情報の提供
3)経験豊かな医療チーム
4)病気のことを知らない「友」
ペット、ボランティア、宗教者など
などの体制が必要ですが、『がんで死ぬのも悪くない』と少しずつでも思ってもらうことが在宅の良さではないでしょうか。
在宅ホスピスケアの支援
残念ながら再発や進行がんと判明したときには、自分の足で歩ける元気なうちに、専門医療機関、施設ホスピスの見学、在宅ホスピス医を訪ね、これらをどう選択し利用するかを決めておく必要があります。しかし、再発がわかったときには専門医療機関にお願いし、効果のない化学療法などの副作用に苦しみ、体力が落ちてへとへとになった頃に、在宅ホスピス医にお願いするというのが現状です。
在宅ホスピスケアでいつも考えていることは下記の通りです。
1)症状のコントロール
疼痛、消化管通過障害、脊髄転移、呼吸機能障害
2)「家族の中で大切にしてもらう」ことの実現
3)ほかの人に喜んでもらう
いささか自己犠牲を払っても、職業を通して実現、友人への便り
3)などの実現のために、色々なボランティアが参加しております。最近力を入れているのは、パソコンボランティアです。当クリニックでは、パソコンに強い患者さんが先生となって、定期的にパソコン教室を開いております。そこで習った人達が在宅療養の患者さんの所に行き、インターネットの接続やホームページを作成し、Eメールが使えたり、自分の闘病日記などが公開出来るようになったと非常に喜ばれております。
その他、在宅ホスピスケアを理解してもらうために、下記のような取り組みもしております。
1)「ホスピスケア症例検討会」の開催
2)市民、医療者が対等の立場で参加
3)市民からも自分の家族「療養経験」の報告と討論を「死」の問題を専門家だけに任せない
4)遺族の集い「ひまわりの会」
病歴カードはどう役立つか
当クリニックでは「病歴カード」を作っております。作り方は、下記の通りです。
1)「病歴カードのモデル」を参考にして自分で下書きを作ってみる。ただ、自己に不利になるので公表するのは嫌だと思う事項は記入しなくてもよい。
2)診察時に持参し、これまでのカルテを参考にしながら、主治医が一緒になって考え、適当に加筆・修正の作業をする。
3)スタッフがコンピューターに登録をしてカードを作成し、次回の診療時にB5版10枚のコピーをお渡しする。
「病歴カード」は、他の医療機関にかかる場合にも有効ですが、患者自身が自分の健康や病気について責任を持つ意識が芽生えます。また、「私の希望」として、がん告知や延命治療についても記入してもらいますので、主治医と患者間に信頼関係が形成しやすくなります。
今後の課題
ここ数年、在宅療養希望者は増加しておりますが、対応する医療者がまだまだ少ないのが現状です。また、「病院から在宅へ」の流れは極めて強くなると思いますが、介護力不足や65歳未満の方(介護保険外)など、どう対処していくか問題はいろいろあります。 それらの問題を解決するためにも、療養における患者の自己選択の拡大や「死生学」の浸透など、代替医療なども含めた医療情報の提供が必要です。また、症状のコントロールの客観化(EBMの視点の導入)、医療者間のネットワーク作り、QOLの評価法の検討など、医療者側の体制を整えていくことが必要です。
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