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ニュースレター

第4.5号合併号   NEWSLETTER   大阪地域医療ケア研究会   2003年10月17日発行


 
第1回研究大会 第2・第3合同分科会
▼第3号ニュースレターに引き続き、3月21日に行われた研究大会の内容を掲載しております
 
▼患者にわかりやすい医療について(1)
  橋本 忠雄(橋本クリニック院長) http://www.hashimoto.or.jp/
「診療所における情報開示の実際」  

橋本クリニックの概要
 18年前(1985年)から「私のカルテ」をつくりまして、患者さんに情報を渡していくことを始めました。2年前(2001年)からは、電子カルテを導入して、情報開示の質と量が向上したと思っております。本日は、その2つの事に関して報告したいと思います。
 当診療所は、京阪電車の土居駅から降りて3分程歩いた所にあります。受付に電子カルテが並んでおり、患者さんが来られて画面を見ながら、『今日は診察を受けたい』とか『薬だけ処方して欲しい』などのやりとりがあります。最近は当院のホームページを開示して、患者さんが自由にクリックして見られるようにしたり、操作が出来ない方は受付で意見を言って頂き、職員がその場で掲示板に書き込めるように、ホームページを活用しています。
 当院では、電子カルテを導入している関係で診察中に医療秘書が同席し、診療記録を入力しております。そのため、受付の画面に『診察室では、医師だけに話がしたい』など、プライバシーの保護などを考慮し、患者さんに選択してもらうようにしております。

あなたの病気の主治医はあなたです
 情報開示をはじめた頃は、患者さんが薬の名前もよく解っていないということがありましたので、名前を見て確認していただくために、カウンターの下に薬を貼っていました。また、レントゲンやカルテの保存期間が過ぎたものは、『ご希望の方には、御自分のカルテやレントゲンを差し上げます』と院内に掲示しました。また、院内の4箇所に『患者さんの権利章典』を掲示しております。受療権、医療の参加、インフォームド・コンセント、プライバシーの保護など、患者さんは医者にお任せするのではなくて、ご自分の病名や検査、治療法、薬剤、費用などについて十分に説明を受けて、それに同意したり、選択できる旨を明示しております。初めて来られた方に書いていただく問診票ですが、Eメールの欄を付け加えたり、一番下の欄には、「もし、あなたが癌などの病気の場合は、本当の病名を知りたいですか?」と患者さんの意向をまずお伺いしようということで、「知りたい」「知りたくない」「わからない」などを書いていただいております。

当院の構成
 当院の医療・介護の構成は、外来、通所リハビリ、訪問看護、訪問リハビリ、ヘルパー事業、往診という部門から成り立っております。
 診察室の中は、電子カルテの画面が7つあります。3つは私が見て、3つは打ち込む医療秘書の2名(夕診時は1名)が使い、あとの1つは看護師が見ております。 電子カルテが導入されても昔ながらの『私のカルテ』は共存しております。電子カルテが導入されても衰えることなく、『私のカルテ』は患者さんに浸透しており、約8割の患者さんはいつも持って来てくれます。

リアルタイムのカルテ開示
 目の前に患者さんが来られて「今日はお腹が痛い」などと言われ、その言ったことが目の前の画面に入力されていくので、患者さんは自分の言ったことがどのように受け取られるか、自分の自己情報のコントロール権が保証されています。「あっ、そんな事言ってません」と間違いを訂正したり、「その事は入れないで下さい」など、患者さんから自分の意見を申し入れることができます。『私のカルテ』を使って情報開示をしておりましたが、更に一段と情報開示が進んだと感じております。当院は、糖尿病、循環器の専門医にも来てもらっておりますが、すべて電子カルテを使って診療していただいております。

カルテ開示の意義
 先程も申しましたが、患者さんが自己情報をコントロールできるということと、医療行為におけるインフォームド・コンセントの実効性を担保できるということです。
 私のカルテの中身ですが、心電図を貼ったり、糖尿病のお薬が今日から変わる場合など、止めるお薬を貼っておくと、ご家族の方にもわかるようにしております。このカルテの良い点は、患者さんが情報を書いて来てくれることです。
 例えば、「5月13日から薬を服用して、3日後の16日には足がとても軽くなった。25日、手の震えも心持ちましなような気がする。18日後には家の階段が軽くのぼれるようになった。」と書いています。この人はパーキンソン病なんですが、私の投薬がよく効いて、2週間で症状が100悪かったものが30まで減ったということが一目瞭然でわかるわけです。また、患者さんの中には、私のカルテに記載されているデータを拾いあげて、自分でデータをつくり上げて来られる方もおられます。ここまできますと、患者さんが自分の事を自分でわかる、自分が自分の主治医になるというところまで達しておられ、非常に感動しております。
 その他の活用としては、患者さんは他の病医院にも通院され、他院でも記載してもらいますので、処方されたお薬の重複や副作用、無駄な検査などを防ぐことができます。また、レントゲンは貼り付けることができないので図示しておき、どのような処置をし、どういう病名だったかなどを記載しております。
 最近は、医療に対する私の希望をできるだけ書いてもらうようにしております。表紙の裏に「癌の場合は、私に告知して下さい。延命治療はしないでください。」と書いて来られる患者さんが増えました。
 患者さんから情報提供してもらったもう一つの例で、手の震えがあるパーキンソン病の方です。薬は普通、分3食後ということが多くて、この方にもそのように処方していたのですが、この方は薬を飲んでも震えが止まらないということで困っておられました。私はレモン水で飲んだら効く場合もありますとサジェスチョンをしたのですが、効果がなかったようです。それで患者はどうされたかというと、朝食前に薬を飲むと震えが減りましたとグラフにして持って来てくれまして、これを見た私はまた感動しまして、患者さんというのは、自分の事に対してこれだけ一生懸命取り組めるのだと改めて感じさせられました。

電子カルテにしてよかった
 電子カルテの素晴らしさは、下記の通りです。
・日本語で誰が見ても解る字で記入できること。
・紙ベースのカルテの場合は、保存スペースに限りがあり、永久保存が出来なかったが、電子カ ルテの場合は、CD-Rなどに永久保存ができる。        
・今までは医師は、患者さんに背を向けていたのではないか。電子カルテを導入してからは、患  者さんの方に顔を向けて応対ができ、入力は医療秘書に任せて医師は患者さんに熱中できる。
・往診の場合もモバイルを持参し、診察中に看護師が必要なことを入力する。看護師が看護して  いる時は、医師が診察所見を入力し、診療所に帰って来たらカルテは出来上がっている。

電子カルテの役割
 最初は抵抗がありましたが、現在では電子カルテ無しの医療は考えられないという風に変わり、診療所内の意識改革ができました。今までは、紙ベースでの診療情報だったため情報の共有が図れなかったが、現在では、診療所内でも自宅からでもアクセスできるようになったので、非常に効率も良くなり、各職種間での情報がスムーズに伝わるようになりました。 患者さんに対しては、医療情報がよりオープンになり、それと共に医療の質も上がり、患者サービスの強化になりました。 電子カルテの普及 2002年2月現在、電子カルテは25種類あり804診療所に導入されており、発展の時代に入りました。今までは単独診療でしたが、これからは病診連携、診診連携の時代に入ってきております。大阪ではオーチスと言いまして、阪大、国立大阪、市大、城東中央病院などと結びまして、地域の診療所とのネットワークが始動しております。守口市の病院が繋がれば、当院も病診連携のネットワークに参加したいと思います。


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