アセスメントポイント アセスメントするときに重要なことはニーズです。ニーズを見つけるにはアセスメントしますが、本人や家族が言っている要求、それと本質的に必要なニーズとは違うことがあります。 「デイサービスには行きたくない」という事を問題と思って聞きながら、なぜそうなのか、どうしてそういう気持ちになったのかを含めて、患者さんの意向、要求に沿いながら一緒に大切なプランを見つけていくことが必要です。本人がどう生きたいのか、デマンドとニーズの乖離を常に頭に置きながらその方をアセスメントする姿勢が必要です。ブーメラン訪問になってはいけないのです。人をなぎ倒すようなケアプランはいけません。患者さんの気持ちを生かすような案を出すことがサービス担当者会議です。
症例 61歳、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんで、20年関わっております。私が開業をして21年になります。ALSは全身運動の麻痺により最後は喋れなくなったり、呼吸が出来なくなったり、食べられなくなったり、人工呼吸器を付けざるを得ない予後不良の難病と言われています。この方は20年間、痰の吸引や麻痺障害はひどくなっていますが、呼吸器は付けずに生活をされています。ALSと診断されてから何をしたいかを尋ねたら、「人生の目標はALSの克服である」と言われ、自分が描かれた絵を売る(元々デザイナー)ということでALS基金活動をされました。 ALS基金活動とは、フェルトペンを握り、絵を描く姿勢から『祈りの手の画家』と呼ばれ、個展活動を約1年以上されて、約1億円を集められました。 この方は、もともと外出好きでデザイナーでしたが、自分を犠牲にしてでも病気を究明していきたいと頑張られました。しかし、介護は奥さんのみでボランティアを拒否。奥さんは誰かに手伝って欲しいということでしたが、ご本人は「困ったら言う。医療でやれるところまでやって欲しい」がこの方の基本姿勢でした。自分の意見がきちんとある方で、今も関わらせていただいております。 自宅はリフトを付け、コミュニケーションスペースを作って作業をされています。お風呂は2/3ストレッチャーを使い、寝て足を下ろしてシャワー浴をします。子ども同士が同級生だったので、運動会は義務のようにボランティアの介助者と一緒に参加しました。 私が医療に関わるとき、まず生活全体の中で外に出たい事、やりたい事を第一の課題とします。この方が一番学んだことは、イギリスに行かれた時の食事のとり方でした。鼻から入れる栄養食を持って行ったのですが、1週間ぐらいで無くなってしまいました。どうしようかと悩んでいるとご本人が柔らかいステーキを一口大に切って奥歯に乗せて欲しいと言われたのです。彼はしがむようにして嚥下困難の方のように飲み込みました。これまで流動食しか食べられなかった彼が自宅に帰って来てからは、一口大にしながら色んなものを試みるようになりました。今は普通食に近いものを食べています。やりたいことを掲げることによって目標に向かいADLが向上します。それをプラン化することによって、流動食しか食べられなかったのが普通食に近いものをどのように食べやすくするかによって、違った食事の仕方が出来るようになります。 在宅医療は生活の醍醐味を学べる場であり、継続することで自分自身の生き方をどのように作っていくかということです。
今求められていることは 今求められていることは、『全ての住民の健康で文化的な生活が保障され、全てのライフステージにおいて自分らしく誇りと生きがいを持った生活を送り,自己の可能性の発展と夢を実現させていく機会が保障された社会の実現』であり、その為には全ての住民の暮らしを地域で支える医療とケアが連携した総合的な生活支援が必要です。誰もがいつでもどこでも必要な医療とケアが受けられる医療ケアシステムの構築が求められています。 私達は老いて最期死ぬ直前まで、その人らしい生き方が出来るよう支援するために、『在宅医療塾』は続けて参ります。