お金は回っている! もっと医療や介護にお金をかけたらいいのでは?という事に対して、なかなか難しいという背景に、国の財政が大変だという問題があります。これは、財務省が発表している数字なのですが、かなり深刻です。国の財政を自分の家の世帯に例えてみた状態です。 財政という家なのですが、一ヶ月53万円の月給がありますが、その53万円のうち、毎月20万円ちょっとはローンの返済に充ててます。したがって使えるお金は33万円です。ところが子供への仕送りがあり、毎月43万円の赤字となるのです。足らないから借金しています。年収にして、約646万円の家計が6800万円の借金を抱えておりますので、税金がこれ以上入ったらやはり借金の返済に充てないといけないと考えるのが常識です。
国の財政はどうかというと、税金の方ですが所得税が14兆円ほどで消費税が10兆円ほど。法人税、企業が払うのは10兆円ほど。タバコ税がちょっと前までは5千億円が値上げしまして、1兆円近くまできています。国民としては、合計だいたい40兆円の税金を払っていると思いきや、40兆円の税金以外に私達の懐から出ていっているお金は半分強は年金のお金とかで残りが医療です。医療は社会保険料として払っている分以外に、税金がつぎ込まれています。日本はそういう仕組みになっているのです。
予防・保健への注目 最後に、日本人の保健とか予防とかの意識がす ごく高まっておりまして、経済的に急速にすすんでいます。(図2)健康食品や健康ドリンクなど皆が、喜んで飲んでその会社が儲かって、給料をたくさん払って、税金をたくさん払ってくれて、次は私達の所にぐるぐる回ってきたら、めでたしめでたしなのです。その兆しはある程度あります。ですから、最終的には経済についてはあまり深刻に考える必要もないのです。だけど、介護・医療分野のそれぞれの中で限られたお金をいかに有効に使って、サービスの向上をする事ができるのかという見本を見せる事がとても求められています。
西村 周三 氏 京都大学大学院経済学研究科 教授 専門領域 医療経済学、福祉経済学 1972年 京都大学経済研究所助手 1975年 横浜国立大学経済学部助教授 1981年 京都大学経済学部助教授 1987年 同 教授 1978−1980年および1985−1986年 ハーバード大学非常勤研究員 1990年 同 大学院経済学研究科教授 1999年10月〜2000年3月 同 研究科長 2004年4月 同 研究科長
<学会ほか> 日本経済政策学会理事、日本経済学会、日本財政学会 日本保険学会会員、日本保険医療行動科学会評議員 (財)医療経済研究機構企画委員 臨床経済学研究会(Society for Clinical Economics)幹事 厚生労働省社会保障審議会医療保険部会特別委員
<主要著書> 「現代医療の経済学的分析」(1977、メヂカルフレンド社) 「病院化社会の経済学」(1982、PHP研究所) 「医療の経済分析」(1987、東洋経済新報社) 「応用ミクロ経済学」(1989、有斐閣) 「医療と福祉の経済システム」(1997、筑摩書房) 「保険と年金の経済学」(2000、名古屋大学出版会) 「超高齢社会と向き合う」〔共編著〕(2003、名古屋大学出版会)
<訳書> ドラモンド他「臨床経済学」(共訳)(1991、篠原書店)