事例 7)
1.事案の経過
一審敗訴であるが、和解に至っている。和解内容は原告には厳しい感がある。
2.判決の内容
やや不服 「被告病院の医師らの治療行為と死亡との間で因果関係を認めることのできる過失はない」という理由で原告の訴えを却下している。明らかな因果関係は認められないものの過失と推測されるような部分がある事件であった。すべてが滞りなく時宜を得たふさわしい治療が行われたならば、単に胃出血による出血性ショックであるので十分に救命できる可能性がある。この部分は考慮されておらず、専門外医師がそこそこの医療でも実践しなければならない現状が優先されたのではないかと思われた。
3.各意見書の判決への影響度
とりあえず万全の治療が行われていないことが、判決内容で当会提出の鑑定意見書が度々引き合いに出された。ただし、一方で、不十分ながら治療を行っていることも引き合いに出された。
4.意見
消化器外科医が作成した原審鑑定書は簡潔で消化器関係では問題がないと考える。若干、集中治療や救急医療との初期対応が違う感じはあるが、概ね賛同できる。呼吸循環を毎日の仕事にしている人間とそうでない人間とでは、緊急内視鏡や緊急手術などの実施の判断基準も異なる。しかし、蘇生と称する救命処置のもとで蔑ろにされる命が多くあり、訊かれないと答えない、推測さえもしないという風潮があるように感じる。
本件は、確かに循環器内科医には重荷だったかもしれないが、そうであるならば期待権侵害程度は認められてもよかったのではないかと考える。和解はそれを受けた結果なのか。
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