事例 6)
1.事案の経過
60歳 男性
診断:冠動脈硬化症 狭心症
治療:バイパス手術
臨床経過問題点:
1.術者は冠動脈バイパス手術は未経験であったが、心臓外科部長として16年間のキャリ アがあるので4本バイパス術を行った。
2.心臓停止時間が4時間57分と、4本バイパスであったとしても長時間であった。
2.判決の内容
判決:一審、二審共原告勝訴後確定
鑑定:
・ 医療センター心臓外科部長
1.4本バイパス術では4時間57分の心停止時間は相対的には長いが許容できる
2.4本目のバイパスに2時間を要していることは長い
3.尋問にて:バイパス術未経験であっても16年間基幹病院の心臓外科に属していたのであるからバイパス術を行う実力はあった
4.死因は冠動脈栓塞からの急性心不全であった(病理解剖による証明はないが)
・ 当会循環器科医 証人尋問
1.バイパス術を一度も行ったことのない医師が、いかに他の医師の手術を16年間見学していたとはいえ、4本バイパス術を施行することは許されない
2.肺にて心停止下で手術中は経過時間も重要なチェックポイントであり、術者、助手が知らなかったというということはありえない
3.アテローム塞栓症という診断は病理学的に解剖時に見出されるものであり、この手術時の死因にはそぐわない
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