アシステッドリビングホームにおける家庭的環境化の効果
「生活のないところで痴呆性老人が暮らすということは、魚に酸素を与えないことと同じだ。」と、あるグループホームでは、高齢者、特に痴呆がある高齢者にどれだけ「生活の場」が必要であるかを、このような喩えをあげて明言しています。
アシステッドリビングホームがその理念として掲げる「家庭的な環境」がもたらす意義とその効果とは、第一にこのアシステッドリビングホームが、そこで生活をする高齢者の方々の確かな「居場所」になるということです。
痴呆性老人へのケアについて特に述べると、彼らが自宅で暮らしていた時にできるだけ近い環境が整備されて、初めてそのケアは成り立つといわれています。「痴呆性老人の残存能力を引き出すには、『どんなリハビリをするか』ではなく、『どこでリハビリをするか』が大切である」とスウェーデンの痴呆ケアの権威であるバブルロ・ベック・フリス博士は言っています。つまり、「治療」を目的とする病院や、「施設」でしかないタイル張りの老人ホームでは、どのような技術があったとしても、それはケアの最善の方法とは言えないのです。「人間は誰も不安がある状態では行動を起こさない。不安が取り除かれることで安心感が生まれる。痴呆症の高齢者は、その場所が安心だ、自分の思う通りに行動してよい場所だと分かると、安心感が生まれて、初めて行動を始める。」といいます。これは痴呆性老人に限られたことではないはずです。
アシステッドリビングホームでは、高齢者が若い頃から使い親しんできた家具や装飾品の持ち込みを勧めます。ホームはそれを「許可」するのではなく、「そうあるべきだ」と考えています。自分のための「居場所」は、他人に用意されるものではないはずだからです。このように、自分が自分のいるべき場所、つまり家庭的環境を伴った「居場所」にいるのだと理解することが、先に触れた安心感を生み出し、各個人の生活の質を高めることにつながるのです。
次に第二の効果ですが、高齢者の生活の場となるアシステッドリビングホームには、彼らがその生活の主人公になるべく様々な「役割」があります。もちろんこれはあくまでも本人の意志決定の上で選択できるものですが、「家庭」の構成要員である「家族」にいろいろな「役割」があるように、アシステッドリビングホームでは、彼らが望む役割を取り上げてしまうことはありません。「その人らしさ」を失わずに生活できるということは、イコール、年齢や身体状況に応じた役割を果たしていく環境に自分をおくことができるということでしょう。何かをしてもらうことによって、たとえかえって手直しが必要になるのだとしても、周囲の都合でその機会を奪い取ってしまっては、ケア以前に生活は成り立たないのです。日本国内にある生活施設、あるいは老人病院等で自分が食べる食事を配膳したり、テーブルセッティングができるところがいったいいくつあるでしょう?
アシステッドリビングホームでは、そこに暮らす高齢者を生活の主体者として考え、共に一家庭の構成要員としてホームを作り上げています。そこには「世話をする者・与える者」と「世話をされる者・与えられる者」といった関係は存在しません。それだからこそ、このアシステッドリビングホームの掲げる「家庭的環境」が、単にその優しく暖かい雰囲気を提供するだけではなく、「自分の思う通りに行動できる安心感のある場」として認知され、虚弱な高齢者の、また、痴呆性老人のケアに高い効果をあげるのではないでしょうか?
弊社は決して高齢者用の施設や痴呆症の方々の収容施設を造ることを勧めているのではありません。我が国の福祉政策の中で最も置き去りにされてきた、ケアを必要とする方への住環境とその空間を最大限に配慮した『思いやりのある大きな家(大邸宅)』を造りあげたいのです。
詳しくは、リファレンスのオンラインマガジンをご参照下さい。http://www.reference.co.jp/magazine/assisted.html
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