今後の介護費用はどうなるのか 厚生労働省は将来、介護保険の給付費用を平成12年〜14年で4兆円、15年から17年は5兆5千億円、18年から20年は7兆2千億円、21年〜23年は8兆8千億円と予測しておりますが、先に結論を言うと間違いです。介護保険料については、平成15年〜17年度の全国平均が2,900円が3,300円となり、平成18年〜20年度は4,300円に、平成21年〜23年度は5,100円、平成24年〜26年度は6,000円となると言っております。 医療費は、実は半分は人件費なのです。介護保険は保険料を払って税金をつぎ込んで、それが施設に支払われます。支払われた施設はお金をもらって7割が人件費です。同じく医療費も人件費割合が半分くらいです。では、医療費の残りの半分は何かいうと全体の2割が薬代です。だいたい5%程度が、原価償却費という建物を建てたりする費用になります。それと医療機器と検査代。そういうものが多いようですが、半分は人件費なのです。介護の場合は7割が人件費です。賢い人は「なんやねん?」と疑問を持って下さい。どういうことかというと、当たり前の事をこれから言います。 一般のサラリーマンの給料がこれから、景気がよくなって上がるとします。そうすると私達は、医療保険料を今よりもたくさん払っても文句を言わないと思います。ところが、景気がよくならないとします。普通のサラリーマンとして考えると全然給料が上がらないのに、介護保険料とか医療保険料が上がると困るので文句を言います。でも、サラリーマンの給料も上がってないので、医療従事者も介護従事者も、給料が上がらない事に我慢をしなければなりません。 最近比較的、デフレが続いております。たとえば、これは人によるのですが、今から10年前に比べて給料は上がってないけど、かなり多くの人にとって物価は下がっています。ということは、給料さえ下がってなければ(給料が下がっている人が多いのですが)、生活水準が上がったと考えるべきではありませんか? 医療費の方は、2025年には90兆円になると言っていた厚生労働省は、最近60兆円になると言い方を変えております。それは当たり前で、こういう数字をどう変えるか、どう考えるかによって全部変わってくるわけです。 給料が全然上がらないということを頭に置きながら、介護保険料がこんな上がり方をされたらたまりません。3年後には5兆5千億円から7兆2千億円に上がるということです。毎年上げたりはしません。3年単位で1割ずつあがるということです。給料が上がらなくても、だいたい3年単位で1割ずつ上がって行く事を覚悟しないといけません。結論を言うと、これはやや過大な推計であり、また、ポイントとも言えます。
施設介護から在宅介護へ 大阪と仙台の2箇所で実施したアンケート調査です。 「早期発見で癌を見つけることができるとしたら検診代として自分はいくら払ってよいと思いますか?」という質問をすると、仙台の平均は3,500円から5,000円までした。ところが大阪は、平均はあまり変わらないのですが、異常値がたくさんでました。どういうことかと言えば、1,000万円という人がいるのです。 どうしてと聞くと「言うだけはタダだから」これは本当の話です。言うだけはタダやし人の命を早期発見できる。千人に一人くらいしか早期発見はできないのですが、早期発見できるとしたら、「1,000万円」という答えがでました。 余計な話しをしたのは、介護保険をこういう発想をするかどうかです。つまり、本来1,000万円かかるものを介護保険で利用したら9割引で、そういうふうに思う人がどれだけいるかという事なのです。一方では「9割引やから使わないと損だと思いますか?」と聞いたところ「使わないと損だ」という人もそういう事は考えないという人もいるだろうと思います。利用しない場合「なぜ利用しないのですか?」と質問すると「お金がないから」と答える人がたくさんおられます。 今、難しいのは金額の中で多い、少ないということだけで、低所得者のことを語るのは非常に難しいです。むしろ、お金を上手に使う能力のある人と無い人がいて、無い人に対してどういうお世話をしていくのかが、まさに現場で悩んでいるという事です。それを、今の介護保険でどの程度利用するかという実態調査をやっていくと、「お金が無いから使わない」と、言っている人の半分くらいは実はお金が無いからではなくて、「家族に介護してもらう方が得だと思っている」という事が少しずつわかってきました。 今回の国の方針・改定は、はっきり言って、在宅のサービスをもう少し増やしたい。しかし、施設はこれ以上増やしたくない。でも、施設を増やしたくないといっても、実際のニーズは施設のほうが多い。施設の料金を引き上げるという事をすると文句が出てくる。だから、施設の方はユニットケア等で若干サービスの内容を上げる。厚労省としては、在宅でうまく予防をしたら、介護度が落ちないと宣伝をしたい。しかし、「本当?」というのが今回のポイントです。 いわゆるパワーリハということが「全然意味ないよ」というグループと「やはりパワーリハは、やったらそれだけの効果はあるよ」という間のせめぎあいがずっと進んできています。 そしてもうひとつ大事なポイントは、認知症ケアです。厚労省は「よくわかりません」というのが正直な今の態度だと思います。部分的には同情できます。認知症の問題はどういうふうにお世話したらいいのか戸惑っている中でも、どんどん進行し、ますます難しくなってきているというのが現状かと思います。ただ方向としては、認知症について、いろいろ各種の調査等を行うという予算を厚労省はつけました。一時はグループホームに対する期待が結構高まっていたのですが、実際スタートしてみるとどうもグループホームも成果がはっきり出てこないという現状があります。もちろん現場の方に対して、失礼な言い方ですがこれだけは申し上げておきたい。厚労省がやっている認知症ケアについても、在宅や施設についても、うまくいかないのは、「お金のかけ方が足らないから」という意見がたくさんあります。私もそう思います。ただ、「今の倍かけることが出来るのか?」というと、それは無理です。 スウェーデン・デンマークと比較すると、特に在宅に関しては、今の倍かけたら良くなると思います。しかし、日本の経済の状況を考えると倍は無理という感じがします。でも、やはりいろんな方向を示す時に国民が払っても良いと思う額は、もう一回言いますと給料が全然上がらない場合と、給料が上がる場合とで、あまり変わりませんよというのが先程の結論です。逆に言うと、だまされてはいけません。