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第11号   NEWSLETTER   大阪地域医療ケア研究会   2005年7月20日発行


基調講演2 「医療と介護の新時代」
〜介護保険制度の見直しについて〜
厚生労働省 老健局総務課 企画官 渡辺 由美子 氏


介護保険制度の状況

 はじめに、今回の介護保険制度の見直しの基礎データですが、介護保険がスタートしてから認定者の数が増えております。この間の被保険者の推移が13%に対して、認定者数が8割増ということで、スタート当初は10人に1人位が要介護ということでしたが、今6.7人に1人というような状況です。また、認定を受けた方の7、8割位が実際にサービスを利用されておりますが、この間サービス利用者数も伸びております。全体としては2倍増くらいですが、在宅サービスの伸びが非常に大きく、この間でも2.4倍ということです。介護保険制度をスタートした当初は保険あってサービスなしと言う状況になるのではないかということが懸念されていましたが、4、5年たってみて少なくとも量の面ではかなり整備されてきたということが言えます。

 当然、社会保険なのでサービス利用が伸びれば全体の費用も伸びますし、それに伴っての負担も増えて参ります。スタート当初は3.6兆円規模で始まった介護保険ですが、現在2005年度の予算案で見ますと、既に7兆円近くになっております。この間、年10%位の伸率で伸びているという状況です。

 一方、介護保険というのは半分は公費、半分は保険料で支えられているわけですが、保険料は高齢者の方々にも負担していただいているところが医療と少し違うところです。この1号保険料につきましては全国平均3300円位ですが、現状のままこのペースでこの給付増を支えようと思いますと、次の18年度からの第三期は1000円近くのアップになることが予想されています。

  こうなってきますと当然負担と給付のバランスが制度改革の大きな課題になってくるわけです。我々は単純に給付を見なおすということではなく、介護保険の給付費の構造といいますか、そこが持っている問題点をしっかり捉えた上で給付の効率化、重点化を図っていく必要があるだろうと考えております。

介護給付の構造

 これは平成12年度と平成15年度の介護給付費がどういったところでどう伸びているのか分析的に示したものです。
 全体を在宅・施設と分けまして横軸が人数、縦軸が単価ということで、伸びているところに大きなポイントが二つあります。

 ひとつは、在宅軽度の人数増が非常に大きいというところです。これは介護保険が軽度の方でも使えるということが普及してきたひとつの表れです。こういった方々へのサービスが状態の維持改善に必ずしも繋がっていないという問題がひとつあります。

 もうひとつは施設の方ですが、元々施設というのは在宅に比べると給付の中で色々な生活費を含めて丸抱えになっています。例えば同じ要介護度3から5の方で比較すると同じような要介護状態でありながら在宅で給付を受ける場合と施設の場合とでは2倍近い単価差があります。単価差の違いということは、裏返せば利用者負担の違いということになってまいりまして、負担の公平性という観点から今回この施設給付の見直しをしていくとことになります。在宅重度の部分、ここはもちろん医療との関係も出てくるわけですが、介護の部分では手薄になっています。このような絵柄があって今回の給付見直しということになります。

 今回の改正ですが、介護保険はご案内のとおり3年サイクルですので18年の4月からということになります。18年度から、各市町村は保険料、事業計画の見直しを行いますが、重要なことはサービスとか基準の大半はこの介護報酬によって決まっていくところがあるかと思います。ここにつきましては、社会保障審議会の中に介護給付費分科会という報酬を決める分科会があり、これを3月18日からスタートして、法律の論議と平行した形で細かいサービスの基準や報酬づくりの作業を、18年4月に向かって進めていくことになります。

 もうひとつのポイントは、介護報酬は3年に1回の改定で、診療報酬は通常2年に1回ですので6年に1回同時改定となります。今回の18年4月は初めての同時改定ということになります。介護保険が始まったときに医療との関係でなかなか十分整理しきれていないところもあり、今回は予防も含めたサービスの中身を決めていくと同時に、この診療報酬改定と足並みを合わせながら医療との関係について進めていくところがポイントでございます。

見直しの基本視点

 今回の見直しの大きな視点ですが、一点目は制度の持続可能性ということで、今の給付構造が持っている問題ということを踏まえながら、効率化重点化を計っていくということです。
 二点目は、介護になっても要介護になってもまだ軽い段階でできるだけ重度化を防止するという、予防重視型のシステムへと転換していくということです。
 三点目は介護に限らないことですが、社会保障と他制度との連携、調整ということを視野にいれた見直しをしていこうということです。

介護予防の推進

 今回の制度見直しのポイントとしては大きく二つございます。
 ひとつは保険給付ということで言いますと要支援の方には予防給付、要介護1以上の方には介護給付ということで、制度上は予防給付、介護給付とわかれているわけです。具体的なサービス内容はマネジメントシステム、さらには対象者の範囲と予防給付を再編して見直そうというのがポイントです。
  
 ふたつめは地域支援事業(仮称)です。法律上、地域支援事業という名前になっておりますけれども、介護保険の個別の給付の対象にはなっておりません。この対象者の中にも放っておくと要支援状態になりそうな、いわば境界層の方というのがいらっしゃいます。こういった方々については従来、老人保健事業とか介護予防地域支え合い事業という補助事業という中で、予防事業がされていました。むしろこういった方々については、保険制度の中で保険者である市町村が一貫性・連続性のあるシステムのもとで見ていくということが、より効率的に行えるのではないかということで、今回地域支援事業を保険制度の中に位置付けしていこうということです。制度的に申しますと新予防給付や介護給付は個別給付ですが、この地域支援事業というのはいわば事業ですので、保険者である市町村に一括で交付金をお渡ししてその中で事業をやっていただきます。

要支援・要介護1の増加

 そこで見直しをする背景ということで少し申し上げたいと思います。冒頭で介護認定を受ける方が増えていると申しましたが、非常に要支援、要介護1の方々が伸びております。今も認定を受けた方の利用者の半分位が要支援、要介護1というような状況です。介護保険を始めましてから特に要介護認定システムでいろいろなデータが得られるようになりました。そのデータを要介護状態になった原因疾患別に分析しますと、要介護3以上の中重度の方と要支援、要介護1までの軽度の方というのはあきらかに大きな差があります。要介護3・4・5では、脳卒中を原因とした要介護状態になる方が増えており、むしろここは医療から流れてくる部分がかなり多いと思います。そういった意味では、医療の部分でいかに早期リハをしていくかが、後の介護の方にかかってくると言えます。

 一方、要支援や要介護1の方々というのは、もちろん脳卒中の方もいますが、大半は廃用症候群の方々が非常に多く、骨折転倒とか高齢による衰弱ということで、徐々に生活機能が低下していくタイプが非常に多いことがわかりました。介護保険スタート時も予防給付、介護給付で分けていましたが、あまり軽度者と中重度者との状態の違いを意識したサービス内容にはなっていませんでした。比較的軽度の方にも介護的なサービスが中心に出されているということで、そういったサービスがかえって残存機能を生かすというよりは逆の方向に働いていたという部分がいろいろな地域のデータから出てきております。
 今回の予防給付の見直しというのは、今ある予防給付についてこういったデータをもとに対象者の範囲であるとか、サービスとかマネージメントをもう一度再編していくことが一つのポイントになるということです。

 それでは、具体的に対象の範囲がどうなるかですが、現在は要支援から要介護5までのいわゆる6つの区分でありまして、基本的にはこの区分というのは介護の手間ということで区切っています。実際には要介護1の方の中にも状態からいうと非常に要支援に近い、あるいは適切なサービスを提供することによって状態の維持改善の可能性がかなり高い方がおられます。もう少し、要介護1も含めて要支援という状態として定義付けを変え、予防給付をしていく。いわば、予防給付の範囲が従来、要支援だけであったわけですが要介護1の一部も入ってくるということです。実際にこういった方々がどういう風に区分されてくるのかということですが、基本的に今の要介護の認定につきましては、一次判定のコンピューター判定と人の目で見る介護認定審査会の二次判定という二つのプロセスになっています。この部分は基本的には変わりません。ただ今の要介護1の方の中から新しい定義の要支援状態に近い方というのを選定してくる為の作業なりデータが必要となりますので、要介護認定審査会の中で要介護状態区分審査に加え、状態の維持または改善可能性の審査という部分が加わります。この審査をする為に少し認定調査項目(現在79項目)につきましては、高齢者の生活機能を評価するような調査項目を十数項目ぐらい追加するとか、主治医の意見書においても判定できるように見直していきます。

介護予防のメニュー

 予防給付というのがどういった内容になるのかということです。これも少し誤解が多く、予防給付はみんな筋トレになってしまうのではないかということがよく言われるのですが、そうではありません。これは法律をご覧いただければわかると思います。
介護保険の中の予防給付のサービスとしましては、訪問介護とか通所介護とか通所リハビリテーション等々。基本的には予防給付については、施設入所、グループホーム以外は入っているわけです。今回の予防給付の中でも法律上の名称は予防訪問介護とか予防通所介護というような名前になりますが、基本的には既存のサービスも枠組みとしては残ってまいります。実際にはサービスの中身について具体的な見直しをしていこうということです。

 例えば通所介護とか通所リハビリテーションについては、通常ですと行って食事をして入浴をしていろいろな集団活動をしてということがパッケージになっています。その部分を例えば食事がなくてもいいわけで、機能訓練だけをやってくるというようなサービスもあるでしょう。よく言われております筋トレというのは、そういった中のプログラムの一つとして入ってくるかと思います。筋力向上とか栄養改善とか口腔機能向上、これも市町村のモデル事業などで今エビデンスの積み上げを行っているところです。筋力向上トレーニング事業というのが介護保険の中に出てくるわけはありません。あくまでも事業として、予防訪問介護とか予防通所介護ということになるわけです。

 ホームヘルプにつきましても、ホームヘルプが使えなくなってしまうのではないかということが言われていますがそうではありません。現在、提供されているサービスの中には、いわば家事代行型、家政婦がわりに使われている部分があるということで、そういったものについては相当の適正化をしていくということです。それから全体の予防給付サービスについてもう一度マネジメントやプラン作りの段階から全体を見直して、きちっとした期間設定をして評価していく。これは本来なら通常のマネジメントにあってしかるべきものでありますし、予防の部分についてはその部分を徹底させていくということです。

施設給付の見直し

 施設給付の見直しですが、一つは在宅と施設のバランス、特に給付とか利用者負担の面で見ますと施設は生活費も含めて丸抱えで給付しており、いわば在宅に比べると割安というような状況であります。ただ同じような要介護状態であれば、どういった場でケアを受けても負担の公平は計られるべきだということで、サービスの中でもグループホームや有料老人ホームはこういった食費や居住費用といった生活費は全て自己負担になっています。こういったことも含めて、介護保険三施設、ショートそれからデイサービスの中の食事部分につきましては、保険の外に出して利用者の負担ということになります。ここの部分については自由料金の世界になっていくわけですが、当然負担できない方もいらっしゃいますのでこういった方々につきましては、介護保険制度の中で一定の補足給付をすることで負担の上昇がおきないような措置をとっているところです。

 特別養護老人ホームを例でみますと、第1段階から第3段階とあり、今の保険料段階でいう第2段階の方であり、いわゆる市町村民税世帯非課税の方です。こういった方々についてトータルの負担は、第1段階でいえば2.5万円位ですし、第2段階でいえば4万円位です。第1段階、第2段階の方でいえば現状と変わらない、あるいは現状より少し低くなる位で設定をしておりますし、第3段階の方々についても負担が上昇しないということで一定の補足給付をうって居住費や食費の負担についてはその右の方にありますような額におさえられるようにしたいと思っています。

新しいサービス体系の確立

 この背景としましては、これから2015年にかけて団塊世代は高齢期に入り、高齢者の数も多くなってきます。高齢者の数が多くなるというだけでなく、認知症の方が増えてくるということです。私たちの推計で150万人位ですがこれが2015年には250万人になるということもあり、これからの介護サービスの中身や体系ということを考えていく時に、認知症高齢者の特性というものをふまえたものにしていく必要があるということです。

 特に認知症高齢者というのは環境の変化に弱いというところがあります。今の介護サービスというのは広域型の利用のものが多く、通所系サービスでも本来は歩いて行ける範囲というイメージなのですが実際には大きなバスなんかで連れていくというかなり広域的になっているのではないかと思います。これから増えていく認知症高齢者への対応を考えると、一般的なサービスに加えてもう少し身近な生活圏域のなかで様々なサービスが提供されていく地域密着型のサービスを作っていくが必要があるわけです。

地域密着型サービス

 具体的に地域密着型サービスとして法律の中に位置付けしているのは6つのサービスです。
この中でもグループホームと認知症の方のデイサービスを地域密着型サービスに位置付けるということです。
 施設につきましてもこれからはできるだけ小規模のものをという事で、特養とか介護専用型とくにデイにつきましても小規模のものは地域密着型のほうに位置付けしております。

 それから小規模多機能型の居宅介護と都市型だと思いますが地域夜間訪問介護というものも6つのサービスのなかに新しく位置付けているところでございます。地域密着型サービスというのが体系、制度的に従来のサービスとどう違うかというところですが、今のサービスというのは都道府県知事が指定・指導・監督をするということで保険者とあまり関係のないところで決まっていく仕組みになっています。地域密着型サービスについては基本的に保険者である市町村がサービスの質・量の面でも関与できる余地を広げていこうということです。具体的にはA市が指定をすればそこの住民が利用していく。市外の方が受けた場合には基本的には全額自己負担ということで、できるだけ地域密着という主旨をいかしてそこの住民がつかえるようにしていくということです。

 それから地域単位でのサービス基盤や整備あるいは介護報酬につきましても一定のガイドラインは国で定めますが、ある程度地域によって弾力的に設定できるということです。この点も保険者としてもう少し関与できるように広げています。今回法律の中では6つの事業だけを位置付けることにしております。
 こういったサービス体系の見直しと合わせまして、いま国会に出しております介護保険法の見直し法案と別にもう1つ法案を出しております。現在はハード部分の施設整備費というのは、税金で賄っており、基本的には特別養護老人ホームなどの新設とか改築などをする場合は、都道府県を通じた補助金というシステムでやっております。ただこれからは、市町村を中心にサービス供給体制も含め、より保険者に機能を持たせるということです。面的な整備計画を立てていただいて個々の施設に対して補助金を出すというのではなく、整備計画に対して一括に交付金を出していく。その計画の範囲内であれば比較的もらった交付金を弾力的に使えるようなシステムに変えていこうと思っております。

 サービス体系でもう一つだけ申し上げますと、今、65歳以上に対しての施設整備状況を見ますと諸外国に比べて遜色ないのですが、非常に遅れているのが徐々に在宅から住み替えていくときに必要なケア付住宅というようなものです。介護保険の中でも特定施設という形で対象になっているのは、有料老人ホームとケアハウスとそれから特定とは違いますけれどもグループホームという形があり、こういったものが非常に少ないことがあります。施設か在宅かという二元論ではなく、その間の選択肢を作っていくために特定施設の対象というものをもう少し拡大していく必要があります。基本的にはインハウスでの提供が基本ですが、外部の介護サービス事業者との提携というようなものもふまえて、形態の多様化というようなこともしていきたいと思っております。

サービスの質の向上

 次はサービスの質の部分でありまして、ここはこれから申し上げます情報の話と事業者規制の見直しとケアマネジメントの見直しという三つの柱がございます。
 まず情報の公表ですが、介護サービスについての情報開示の標準化をしていくという方向性が打ち出されています。これを今回の法律の中では制度化をしたということで、情報開示の標準化、基本的には第三者評価という格付けの評価ではなく、できるだけ利用者の側から見て客観的な情報をサービス事業者の統一的な項目で公表していくシステムを作っていこうというものです。具体的にはサービス事業者全てについての情報公表ということを法律上義務付けをしております。公表すべき情報としましては、事実情報である基本情報と実際にその内容が事実と合っているかどうかを第三者が確認をして公表するという調査情報に分かれております。

 例えば介護サービスに関してのマニュアルが整備されているか。その場合、実際に第三者の調査員が入ってその事実と違いがないかを調査します。ここにつきましては都道府県知事が責任を持って行うということで法律上の構成になっています。ただこれにつきましても18年4月から全てのサービスについて一斉にというわけにはいきません。これは研究会等で情報項目についての合意ができているものから順次ということでおそらく3年位かけて全サービスについて施行していくというスケジュールになるかと思います。

 二つ目が事業者規制の見直しということです。介護保険は非常に規制緩和の盛んなときにできた制度ですので、特に事業者規制ということに関しては参入規制というのは医療などに比べますと非常に少ないということで、非常に多様な事業主体が入ってきております。実際に参入してきた事業者の中には、かなり悪質のものも増えており、指定の取り消しなども年々増えてきています。そういった中で介護市場のルールを犯した者に対しての規制というところが非常に弱いというところがあります。例えば医療保険などで一旦指定取り消しを受けると5年間は新しい申請ができない仕組みになっています。しかし介護保険にはそういった仕組みがありません。今回の見直しの中では、指定が取り消された場合に5年間は新しい申請が出来ないというような、指定の欠格事由の見直しを行おうとしています。それから指定の更新性ということも、保険医療の更新期間同様に6年間の更新性を入れようと思っております。今指定を受けている方につきましては、18年4月で一旦全て見直し指定というのを法律上しますので、更新が始まるのは6年後となります。また、都道府県、市町村が、より実施に即した指導監督や処分を行うことのできる、勧告・命令ができる権限を法律に追加しようと思っております。こういったことを通じてルールを守っていき、劣悪なサービスを提供した場合についての事後規制を強化することで全体のサービスの質を向上していこうと思っています。

 サービスの質との関係でいいますとケアマネジメントの見直しがあります。ケアマネジメントは、介護保険の導入と共に新しく導入された制度であり、走りながら考えるという部分が非常に強かったと思います。新しい資格でしたので、ケアマネージャーが十分な量、養成ができるかということも当初の課題でした。実際現場のケアマネージャーの抱えている悩みですが、非常に件数が多いということで、本来のケアマネージメントのプロセスである担当者会議とかに時間を割けるほど余裕がないということを聞いております。それから一人仕事的になっているところもあり、色々な事をかなり一手に抱えているところがあるかと思います。特に介護保険が始まってから市町村側がやるべき事例、例えば高齢者であれば介護以外の色々な相談なり不安もとかく全てケアマネにというような傾向が出来てしまい、介護保険の中では解決できないような困難ケースを抱えてしまい、その持って行き場所がないというようなことも聞いております。そういう意味では量的にはかなりケアマネージャーは充実しており、個々のマネージャーは非常に頑張っていると思います。しかし、制度全体としてみたときにそこがうまくワークするような形になっていないということです。

 それとケアマネージメント事業所の9割がサービス事業者との併設ということです。保険者側からよく出される課題ですが、本当にそのプランが公平中立の面から見て適切なものになっているのか。特に軽度者につきましては多くの場合、かなり自社サービスという事があるのではないかともいわれております。さらにもっと言えば、ケアマネージャーの課題とも共通するかもしれませんが医療との連携や同じ介護サービスの中でも在宅と施設の連携部分が必ずしも十分でない。ここは介護報酬にも若干問題がありまして、マネージメントの連携部分を評価する形になってないといけません。要介護度の重い方でも軽い方でも件数に応じて点数がつくというような仕組みになっているので、この部分が若干誘引してしまっているところがあると思います。

ケアマネジメントの見直し

 ケアマネジメントの見直しということも含めて大きく三つの方向性を出しております。
 まずケアマネジメントというものを個々のケアマネージャーが介護サービスの中でのマネジメントということだけでなく地域全体で支えていく。介護保険の中だけでは解決できないような支援困難事例の対応は、医療との連携、あるいは同じ介護サービスの中の在宅と施設との連携といった地域全体で支えていくような仕組みを作っていくべきではないか。その拠点的な機関として、地域包括支援センターというものをつくっていこうということです。

 二つ目は、個々のケアマネージャーの資質、専門性の向上ということです。この5年間は量を確保するということに懸命でありましたが、これからは質ということを重視していかなければいけません。そのためには研修などの義務化と共に体系化をしていこうということで、一定の経験年数を積んだ方でスーパーバイズ的な仕事ができる主任ケアマネージャーというものを作っていこうと思っています。それからケアマネージャーの資格につきましても5年ごとの更新制を導入します。これも誤解が多いのですが、実際にケアマネージャー試験に合格した資格が5年で消えるわけではありません。いわば介護保険の中の保険ケアマネージャーとして働いていくために、試験が受かった上に一定期間ごとに研修を受けてもらう。それによって保険ケアマネージャーとして働く資格を更新していくということです。それから二重指定制といいますのは、今の仕組みの中ではケアマネージメント事業所をみるということで個々のそのケアプランとケアマネージャーとの関係が分かりにくいという状況になっています。個々のケアプランがどのケアマネージャーが作ったものかということがわかるような仕組みも入れていこうと思っております。

 もう一つ重要なのは、独立化中立化の方向に持っていきたいということです。これは制度創設当初も議論があり、サービスの現場から独立したのが良いのか、サービスに近いのが良いのかという議論があったわけですが、制度スタート当初は数を確保する必要もあり、併設ということを基本的に認めてきました。先程申し上げたように9割が併設という状況ですが、今後は独立化の方向に持っていきたいと思っております。独立という言葉の定義もありますが、今の基準報酬をもう一度見直していく必要があります。件数に応じて報酬が増えるということではなく、個々のプロセス(医療・在宅・施設との連携)でどういうことをしたか、そういう行為に応じて加算されていくような体系に見直していくということが必要じゃないかと思っています。それから件数ということで申しますと、包括支援センターのバックアップ体制を入れることにより担当件数を減らし、報酬を重点配分していくということで独立化、中立化の方向を目指していきたいと思っております。

地域包括支援センター

 これは冒頭で申しました予防のところと関わってくるわけですが、地域包括支援センターについては介護予防のマネージメントをするというのが大きな機能です。この包括支援センターというのは、介護予防のところもそうですが、要介護になった後の個々のケアマネジメントいわば全体のつなぎ部分も含めてサポートしていく拠点として位置付けをしたいと思っております。

 地域包括支援センターが持つ機能というのは三つあります。
ひとつは介護予防のマネジメントの部分です。これは冒頭でも申しましたように新予防給付のマネジメントということがひとつあります。それから新予防給付と合わせて今回新しく位置付けをする地域支援事業の中の介護予防事業、こういったマネジメントも合わせて、要支援・要介護になる前から要介護になった後の軽度の方々のマネジメントをここが責任を持って見ていくということになります。ここはいろんなやり方があると思うのですが、都市部の件数の多いところでは、保健師さんや経験のある看護師さんが、一からケアプランを作るということは数として、こなしきれないところもあります。その場合プランの原案づくりというところは、包括支援センターから委託をすることによって居宅介護支援事業所のケアマネージャーがつくるということも実務としてはあると思います。従来と違うのは、軽度者の特に新予防給付のプランについてはこの地域包括支援センターが最終的な責任を持ってプロセスを見ていくということになります。

 二つ目の機能としては、総合的な相談支援ということで、高齢者の持つ色々な懸案というのは介護保険サービスだけでは解決できない問題があります。そういった問題を他の機関につないでいくという役割を包括支援センターに期待してます。

 三つ目は、個々のケアマネジメントを支援していくということで、包括的・継続的ケアマネジメント支援という機能をここに持たせていくということです。そのためにはスーパーバイザー的なケアマネージャーということで、主任ケアマネージャーの配置を考えております。ただこの主任ケアマネージャーはまだ資格として確立しておりません。どういう形で主任ケアマネージャーの資格を与えていくかということについては、ケアマネージメントリーダー研修を受けた方の中で、一定の実務経験のある人というようなことも考えられると思います。総合的なコーディネーションしていくというのは社会福祉士もなるわけですが、どの程度の資格にするかというところは議論しているところです。

そこでよくある質問として、既存の在宅介護支援センターとどう違うのかということがあります。
在宅介護支援センターというのもかなりいろんなものがありまして、私は機関型のかなりしっかりしたところは地域包括支援センターに移行していくと考えております。ひとつ違うのは、従来の在宅介護支援センターはひとつの法人なり、大きな所に任せるというようなことでしたが、包括支援センターに関しては、社会福祉法人や医療法人はもちろん、市町村が直営でやるということも考えられます。また、地域のサービス事業者がNPOを作ってそこが受託していくとなど、いろんな運営主体としての形態が考えられると思います。その基本的な運営ルールというものにつきましては、地域包括支援センターの運営協議会というものを市町村に置いてもらい、サービス事業所や関係団体、あるいは地域の住民などにもボードとして入ってもらい、包括センターについての基本的なルールを決めてもらうということです。厚生労働省では、何万人に何個つくれとなどの基準ではなくて、どういった機能を持つべきか、あるいは運営協議会で定めるべきルールというのはどういう範囲なのかといったあたりの骨格を示して、後は地域で考えていただくということになるかと思います。ただ地域包括支援センターについては、全ての市町村で18年4月からというわけにはいきませんので、2年間でこの包括センターの設置と新予防給付のスタートという期間を選べるというような形にしたいと思っています。

負担、運営のありかた

 まず保険料段階につきましては、今の1号保険料は定額の五段階になっているわけで、特に市町村民税世帯非課税のところが非常に幅が広いということです。もう少し所得に応じて、きめ細かく設定ができるように、第2二段階をふたつに割りまして、基礎年金以下のようなところについては新第二段階ということで少し低い保険料が設定できるようします。逆にいいますとその分課税層でカバーしなければいけませんので、この課税層の設定というものをもう少し今よりも弾力化していくということで考えています。ここには書いておりませんが、老齢年金から天引きしておりますが遺族や生涯年金からの天引きということもできるようにしたいと思っております。

 もうひとつは、要介護認定の事務の見直しというのがあります。公平性という観点から委託調査の新規の場合は、市町村実施を原則とする。且つ市町村が委託する場合でもサービスと関係のない公益的な法人に委託することを徹底することにしています。これも市町村によって体制の問題がありますので、一定の移行期間というのを2〜3年位置きますが経過後は、市町村原則を徹底していきます。
 最後に被保険者受給者の範囲ですが、附則のなかでは社会保障に関する制度全般についての一般的な見直しと合わせて、これが17年18年の2ヵ年になっております。この問題についても合わせて検討し、結果に基づいて平成21年度、第四期からの所要の措置ということで附則の中で規定されております。

 最後に全体の財政資産を簡単に申し上げます。今のままですと1号保険料が4300円第3期にありますが、今回の見直し(特に施設給付の見直し)と予防による効果というところで第3期では3900円になり400円程度の低下が期待されます。トータルの給付費につきましても現行では第5期、平成24年〜26年では10兆円を越えるという推計ですが今回の見直しによる財政効果ということで、約2兆円程度の給付減と見込んでいます。そのことによって先程申しました保険料の急増を少なく抑えることができると見込んでおります。どうも御静聴ありがとうございました。

 


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