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プライマリケア

「介護保険で在宅医療現場はどう変わるか 」

 


介護保険下での費用試算 (2)Kさんの場合(表4、5)
 88歳の女性。高血圧、変形性膝関節症、および白内障にて在宅療養中食事・排泄は自立しているが着替え 移動は介助が必要である。膝関節の腫脹、疼痛のため歩行困難である。介護者は息子であるが本人も肝臓病のため3カ月に1度は入院が必要である。息子の妻が働き家計を支えているため、介護者が入院すると訪問看護週3回、ホームへルプ週3回、デイサ-ビス週2回の通所でも支えきれなくなり、老人保健施設に入所し、介護力ができた時点で在宅医療に戻している。

 このケースでは老人保健施設利用時には現行では月に6万円負担である。介護保険になると老人保健施設サービス費用の1割にあたる2万9000円(9割は保険給付)と食費2万3000円に加えて保険料2500円で合計5万4500円になりそうである。また在宅医療期間中は要介護度T(虚弱)のケースと考えられ、現在の負担額(訪問看護週2回2500円、ホームヘルプ週3回9000円)の合計1万1500円から在宅介護サービス費(訪問看護週1回、ホームへルプ週1回)の1割負担額6000円と保険料2500円の合計8500円となるが、訪問看護もホ-ムヘルパーも回数が減り介護者への負担が大きくなると思われる。自費でサービスを利用するとすればやはり負担額は増すことになる。

 提供されるサービスが介護保険の実施までにどれだけ充実するかに今後の状況は大きく左右される。また介護保険ではすべて「個人契約」であるため、利用者側がサービス機関を選べるが、そのため人気のある施設に要望が集中し待機期間も長くなってしまう可能性もあり、必要なときに必要なサービスを受けられないということもあり得る。また40〜65歳までの第2号被保険者は保険料を支払わなければならないが、介護が必要であっても「老化」が原因で「要介護」の状態でないとサービスは受けられない。

介護度認定と開業医
 介護保険が医療保険と最も異なる点は、医療保険では医師の裁量によってサービスの内容が決まるが、介護保険では要介護認定審査会で介護度が認定されて初めてサービスが受けられ「保険証」も配布される。昨年度の厚生省のモデル事業では、コンピュータによる要介護度1次判定と審査員による2次判定が平均27%食い違っており、判定を巡っての問題はかなり出てくるだろう。
 こんな状況で開業医としてどこまでかかわれるのだろうか。介護度の判定にかかりつけ医の意見書が影響することも大きいと思うが、認定するのはあくまでも認定審査会である。かかりつけ医として決まった認定に対して不服を申し立てたほうがよいとのアドバイスくらいはできるようにしておきたい。さらに要介護認定の段階で影響を及ぽせるとすれぱ、やはりケアマネジャーの資格を取らなければならないようである。とにかく医師は疾病ばかりをみている時代ではなくなってきている。在宅サービスに精通し介護のやり方を理解しておくことが大切である。そして患者の生活全般を考慮し、精神面や家族との関係も含めて組織を超えて保健医療福祉の統合がはかれるように行動しなければならない。

表4 施設サービス
入所施設 費用(平均月額)

現行 介護保険下
特別養護老人ホーム 4万5000円 29万円 2万9000円 2万3000円 5万2000円
老人保健施設 約6万円 32万円 3万2000円 2万3000円 5万52000円
療養型病床群 約4万4000円 43万円 4万3000円 2万3000円 6万6000円

表5 Kさんの場合
Kさん(88歳)女性、高血圧、変形性膝関節症、白内障
介護者:息子(63歳)、肝臓病
老人保健施設入所時
現行負担
6万円
 ↓
介護保険下
一部負担金 29万円×0.1
食費 2万3000円
保険料  2500円
合計 5万4500円
在宅療養時

現在のサービス 介護保険下
(1)訪問看護 3/週 1/週
(2)ホームヘルプ 3/週 1/週
(3)デイサービス 2/週 3/週
(4)シュートステイ
1/2ヶ月
負担費用 (1)+(2) 要介護度T 6万円×0.1
介護保険料 2500円
合計 1万1500円 8500円

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