ホスピス

● 医療消費者が求める医薬品 ●

 

副作用情報も判断材料に

 くすりには副作用がありますが、そういったマイナス面はどのように説明なさるのですか。

 副作用情報を提供すると患者さんが混乱するから出さないという意見がありますね。カルテの開示、レセプトの開示にもいえることですが、これからはそういう情報を隠さずに出すという時代ではないでしょうか。

 例えば「胃腸障害が起こるかもと書いてあったら、本当に胃が痛くなった。先生こんなこと書かんほうがいいよ」と言った人よりも、「このくすりは眠くなると先生が言っていたけれど、そのとおり眠くなったわ」と安心する患者さんのほうが比率としては多いですからね。情報を知らないより、知って安心することのほうがいいと思います。また副作用情報が提供されれば、患者さんのコンプライアンス、服薬を続ける ということですが、それが悪くなるという意見もあります。私は逆だと思っているのです。

 例えば血圧のくすりを出します。それに立ちくらみがするという副作用情報が書いてあります。服用した患者さんが、「なるほど立ちくらみがする、怖いなあ」と思ったときに、次にどうするかです。そこでもう医者に行かなくなったら、確かに治療は中断してコンプライアンスは悪くなります。でも、その患者さんは次にどうするのでしょうか。
 私に「先生、書いてあるとおりに立ちくらみするので、このくすりやめたんだが」と言ってくれればいいのです。
そうすれば、
(1)その症状は最初だけだから、もうちょっと続けていれば大丈夫ですよ。
(2)ではくすりを変えましょう。
(3)くすりはやめて、減食して体重を落とし様子をみましょう。
(4)どうしても嫌なのですか、将来動脈硬化になる可能性もありますよ。
 それを理解したうえでくすりをやめたいのならやめましょう。また飲む気になったら言ってください。と4つの選択肢を提示してもう一度相談できます。そうすれば次に打つ手を探れます。

 コンプライアンスが悪くなるというのは、「せっかくもらったくすりをやめてしまった。先生に言ったら怒られるからもう行くのをやめよう」といったコミュニケーションギャップがあるからなんです。その立ちくらみの話を私にしてくれるかどうかが分かれ目なのです。患者さんの体にとってのリスクとベネフィットをきちんと説明でき、きちんとコミュニケーションがあれば、コンプライアンスが悪くなるということはないのです。

 患者さんは効能や副作用といったくすりの情報を知り、自分の体がそのくすりによって、どのような具合になったのかより詳しく知ることができる唯一の人なのです。それはその患者さんにしかわからない個別の情報だからです。その情報を私に提供してくれることによって、次の治療の判断がより正確にできるわけです。  情報を提供したら混乱する、という見方も今までありました。でも提供しなくても混乱しています。情報を提供して一時混乱しても、患者さんは自分で選択するようになってきます。だから、抑えるだけではなく、情報を提供するから患者さんももっと勉強してほしいと考えています。そうなってきたらトラブルも少なくなると思います。

 ●待合室には、くすりや医学に関する資料が置かれている

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