ホスピス

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何のくすりか詳しく説明

 いわゆる「おまかせ医療」に慣れた患者さんにとって、先生の説明に初めはとまどいそうですね。具体的にはくすりの説明はどのようになさっているのですか。

 当院に初めていらっしゃった患者さんには、以前にかかっていた病院、診療所などからもらって飲んでいたくすりを持ってきてもらいます。初診のときに持ってくる人はなかなかいませんから、そのときにお話しして次回に持ってきてもらったり、近かったら取りに帰ってもらいます。そうしてそれが何のくすりかを説明します。そうでなければ当院ではくすりは出さないようにしているのです。何年も飲んでいたくすりでも、それが胃ぐすりか血圧のくすりかを説明して初めて認識する患者さんがたくさんいます。そうした後で患者さんにくすりを出すように徹底しているのです。
 当院では、よく処方するくすりのサンプルを1錠ずつ1枚のボードに貼ったものがあり、患者さんにくすりを出すときには、それを見せながら説明します。例えば「ピンクの錠剤は痛み止め、粉ぐすりは胃ぐすり、赤い錠剤は朝1回の血圧を下げるくすり、透明な丸い粒は骨を強くするビタミンD。だから血圧を下げる赤い錠剤だけは絶対に忘れずに」という具合です。その説明には1分もかからないし、患者さんのくすりの自己管理がある程度可能になります。しかし、人間はよく忘れるものです。診察室の説明だけでは自宅に帰ってくすりを識別することは難しいのではないかと考え、当院ではくすり袋に各々のくすりの名前を書き、さらに各々のくすりに名前と簡単な効能、副作用、注意事項を書いた添え書きを付けています。そこまですれば、患者さんも自宅でくすりを識別できるようになると思います。
 さまざまな意味で、患者さんが自分の服用しているくすりを知ることは大事なことなのです。「先生のおっしゃるとおりにいたしますから、どうぞよろしく」といった、いわゆる「おまかせ医療」から「自己決定の医療」に向かっているのが今の世の中の流れです。当院はそのためにも患者さんには、きちんとした情報を知っていてほしいと思っているのです。

開業して6年たちますが、患者さんもだんだん当院のやり方になれてきて、くすりの名前を覚えてくれるようになりました。90歳のおばあちゃんでも、「孫の結婚式が近いので、心配だから○○○ちょうだい」と商品名を言ってきます。
 また「この前飲んだ○○○○がよう効いたから、またもらえないやろうか」と か、当院がくすりにつけている簡単な説明書を持ってきて、「これをまたお願いします」と言う患者さんもいます。自分に合ったくすりの名前を覚えてくれて、自分で判断し選択できるようになってきましたね。
 もちろん最終的には私が判断しますし、医師がコントロールしなければならないものは、その限りではありません。難しい病気ではなく、鼻水が出るとか、頭が痛いとか、下痢になったとか、胃が痛いとか、日常よくある症状は自分の体のことですから、本人が飲んでよかったというくすりが一番いいのではないかと思います。


●さくらいクリニックのホームページ。(http://www.reference.co.jp/sakurai/)
●薬袋にはくすりの商品名(左)、くすりには「商品名」「飲み方」「効果 」「副作用」などをまとめた説明書きが添付されている(右)。

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