ホスピス

● 医療消費者が求める医薬品 ●

 

日本製薬工業協会公報誌 「Capsule」
       提供:さくらいクリニック   院長:桜井 隆

 INTERVIEW
 必要な情報は、すべて利用者が理解し、自ら利用できる形で提供する、それが専 門家の役割です。
さくらいクリニック 院長  桜井 隆
 昭和31年兵庫県生まれ。群馬大学医学部卒。整形外科認定医、内科専門医リウマチ認定医、リハビリテーション認定医。大阪大学病院整形外科勤務を経て、平成4年から内科、整形外科の総合的医療を目指し尼崎市で開業。開業以来、医療情報公開のひとつとして、患者さんへのくすりの情報提供に積極的に取り組んでいる。著書に『整形外科自己血輸血マニュアル』『退院後の脳卒中患者支援ガイド』。

情報公開は当たり前のこと

 桜井先生は患者さんとのコミュニケーションやインターネットなど、医療・医薬品情報の開示を熱心に進められていらっしゃいますね。

私は開業する前は勤務医でした。内科から整形外科に移ったのですが、内科を6年間研修した後、整形外科を研修しその後開業したという経歴から、内科と整形外科の両方にかかっている患者さんを診ることも多いのですが、けっこうダブってくすりをもらっている患者さんが多いことに気づきました。
 例えば痛み止めですが、内科でも、歯医者さんでももらっていて、それを知らなければ私もまた処方することになる。二重投与、三重投与になってしまうのです。それを避けるためにくすりの説明をし、患者さんからも聞くようになりました。情報公開に積極的になったきっかけにはそんな経験もありました。
 そんなこともあって私は開業以来、診療情報や医薬品情報を、患者さんに積極的に説明してきました。それはひとことで言うと当たり前のことだからです。料理店でも何かわからない魚がテーブルに出されたら「これは何ですか」と聞くじゃないですか。それと同じことです。医療は特殊な世界かもしれませんが、普通のお店と変わらない部分も多いのではないでしょうか。居酒屋にはメニューが必ずあって、お客さんはそこから自分の好みのものをオーダーする。そういう当たり前のことをできるだけしようということです。
 だから当院では治療費も一覧表にして、患者さんに見せながらその内容を説明しています。くすりを処方して渡すことを投与といいますね。投げて与えるなんて言葉は失礼だから使いたくはないのですが、処方したくすりの説明もきちんとします。

 ●ボードにくすりのサンプルが1錠ずつ貼ってあり、説明が行われる。
 ●患者さんとの交換ノート。

 医師や薬剤師など専門家でなくても、例えば当院の受付スタッフも自分たちがくすりを飲むときは何のくすりかわかって飲んでいます。「何のくすりかわかって飲む」ただそんな当たり前のことをしていただきたいだけなのです。
 また、待合室にはくすりに関する本や製薬会社からもらう「くすりのしおり」、情報誌などをファイルにして、患者さんに読んでもらえるようにしています。「くすりのしおり」には1錠あたりの単価も手書きで書き加えて、くすりの値段も知ってもらうようにしています。それを見て「おっ、今日もらったくすりはこんな値段なのか」などと患者さんに知ってもらうのはよいことだと思います。たまには「待合室で読んだファイルの中にこんなくすりがあると載っていたが、それをもらえませんか」と言う患者さんもいるんですよ。

 積極的な情報公開といっても、患者さんによっては「先生におまかせしているのだから、飲み方さえ教えてくれたらいいよ」なんて言う患者さんもいます。でも面倒でも患者さんにはくすりの説明をして、くすりについてできるだけ知ってもらうようにしています。
 インターネットのホームページもそうですし、勉強したい患者さんを集めて開いている「患者塾」などもそうです。また、リウマチの患者さんとの交換ノートのような形式の「リウマチノート」なども作って活用しています。当院のリウマチ患者の親睦団体「リウマチ負けるもん会」の交流のなかで、ステロイドをけっこう自分流に調節して飲んでいるリウマチの患者さんがおられることに気づいたのです。例えば冠婚葬祭や旅行のときにちょっと増やすといったような。それならノートに服薬状況や病状を記入してもらうことによって双方向で情報交換し、医者も参加した形で、よりQOL(生活の質)向上に重点をおいたステロイドの自己管理が可能になるのではと考えたのです。

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