ホスピス
 

● これからの薬の飲み方を考える ●


<降圧剤を例として考えてみる>

 ひとの血圧は、1日の中で激しく変動し、運動や精神的な緊張、痛みや睡眠不足、排便や入浴といった生活行動で、ときには60〜80mmHgも変動します。しかし、大まかにみると通常の状態では、以下のように揺れ動いているようです。
健常人の血圧変動は、たとえ高齢であっても、就寝後低下し、起床前より緩やかに上昇を始め、起床と共に急激に大きく上昇、朝食の後はゆっくりと下降して午後に向かうが、タ方には一時的に上昇した後、アルコール摂取・タ食で下がり、入浴でさらに下がり、睡眠でまた低下するという変動パターンを呈します。
 つまり、早朝起きだしたときと、タ食前は血圧が高いことが多いわけです。
このような生理的な現象のもとで、毎食後3回の服用や、朝タ2回食後に降圧剤を飲むという方法は適切でしょうか。

 そうではないという解答はすぐに出ます。特に胃を傷めるということが無いならば(実際に、降圧剤はほとんど胃には影響しません)、はるかに有効な飲み方がありましょう。1日2回ならば、朝起床直後と午後3時頃あるいは昼食後が適切と言えそうです。早朝の服用は、朝の血圧が―番高いという現象に対処するためであり、午後3時頃や、タ食後よりはむしろ昼食後というのは、タ食前や残業時間帯、退社時間帯に血圧上昇があり、タ食後には薬を飲まなくても低下の傾向があるからです。
この服用方法が優れていることは、数人の全国的に著名な高血圧研究者にご講演の折りに質問をさせていただいて、ご賛同をいただいていることでもあります。
 最近は、1日1回服用の長時間作用する降圧剤も登場し、便利になりましたが、すべての人がこの長時間作用型の薬剤で具合よいともいきません。まだまだ、個々の特徴を考えて降圧剤を選んでゆく必要があります。

<生理現象の日内変劫---「概日リズム」を考慮する>

 最近になって、山梨医科大学内科・田村康二教授の執筆された・時間治療のすすめ「愚かな処方「1日量、3分服、食後」」という論文を読みました。 (メディカル朝日・99年1月号P・8)

 田村先生は次のように述べておられます。
『戦後の医学はことごとくアメリカ医学に準じている。診療録にしてもいまでは英語 と日本語のチャンポンで書かれている。ところが、なぜか処方だけは日本中の医師の 1,000人中999人は依然としてドイツ語を用いている。
このいまでは日本のみで慣用されている、いわば骨董的処方は現在本家のドイツでは ほとんど用いられていない。そこで私は「旧ドイツ式処方」と呼んでいる』

 そして、先生は1日量を3つに等分して食後に服用することの非科学性を強調されています。それは朝、昼、晩とひとの体の生理状態は変動していると考えると理解しやすくなります。
 つまり、時間生物学という観点が大切になるということです。
それは、生命現象と時間の関係を解明して、ひとの生体リズムを検討し、病態の解明・診断さらには時間治療(chronotherapy)を重視しようという提言に続きます。先生の説は、1960年代の先人たちの研究や97年の「Nature」誌に掲載されたひとの約24時間 の概日リズムをつくる時計遺伝子の存在に触れながら、これまでに解明された概日リズムのデータとして次頁の「日時計」を掲載されています。

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