医療情報の開示
 

患者が創る自分の「病歴カード」

 

パンフレット

 このパンフレットは、3年前から新患には全員にお渡しするようにしている。当初の予想とは違って、私の思惑や心配とはかけ離れた「成果」も多い。ここでは、「情報提供」と関係の深い項目について少し説明したい。

1) の「明細領収書」は、いわゆる支払額を打ち出した「レシート」ではなく、 初診料や再診料、特定疾患指導料、検査料、処方料といった各診療行為の明細を打ち出すもので、ソフトの開発には少々投資した。しかし、この3年間での発行希望者はわずか数名であって全く拍子抜けである。
 本論からはずれるが、いつも年末になると、1年間に支払った「医療費総額」の計算を、医療費控除のために手渡すのを要求する患者が多いが、本来これは筋違いだろう。節税などの解説書に「医療費総額」を医療機関で教えてもらうように記載している記事を見かけるが、これは患者本人がデーターを残しておいて自分で計算すべきものだ。今のところ、やや苦々しい思いで応じている。

2)の「検査結果」のシートやそのコピーを手渡すことは、検査センターのサービス体制(検査データーを2部提供してくれるので1部は診療機関の記録として残し、他の1部を患者に手渡す)のおかげで、少しずつ浸透してきたのではないか。医療費の節約のためにも早くすべての医療の場に広がることが望まれる。

3)の「カルテの内容」の「開示」に関しては、この3年間全く請求がない。このことは、1)の「明細書」とともに全くの予想外であった。ただ、カルテの記載自体の内容の濃さという点では、自分としては十分な内容をともなった記録としての自信はない。とくに初診時には念を入れて、少しでも体系的に記載したいと努力する方向ではある。 一般的にカルテの通常の部分の記載は医師にだけ許されているようであるが、本来はナースなどもその記載に参加できるのが望ましいだろう。記入者のサインと責任が明確であればいいのではないか。 現在は、在宅療養の患者に対しては全症例に対して、また外来の症例でもナースが関心をもった場合には「看護記録」として記載し、カルテの用紙の色を違えて、末尾に綴じ込んでいる。この点は、電子カルテになれば自ずと多くの医療者が書き込む方向に進むのではないかと期待している。 電子カルテになって、診察の場に大きなディスプレイに記載事項が見やすく提示されるなら、キーボードから文字を打ち込むという煩雑さはあるにしても患者と医療情報を共有する楽しみがあろうから、利用してみたい。ただ、患者との精神的な共感を作り上げるための工夫はいろいろ必要となるだろう。

 

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