● 「日本におけるマルプラクティス(医事紛争)の現状とその背景」 ●
医療事故調査会の初年度の実績
昨年4月末より受けた相談件数は、300件を越えており、月平均21件で、就中6件は鑑定意見書を希望しておられます。勿論、そのような方には資料を整えて頂く為に、証拠保全をして頂きますが、必要に応じて弁護士へのアプローチをお勧めしています。弁護士より鑑定意見書依頼は、87件を数えています。13件は当方の事情で受託不可能でした。
その理由は、
- 鑑定医が会員内外に見出せない―精神科・美容整形外科
- 指定期限内では鑑定不能例(産科)
- 医療過誤として扱えない例(浴室一酸化炭素中毒症)
です。
鑑定依頼87件中、最終的に意見書作成作業に入ったものは67件で42件は完了しています。
患者の性別比は、男:女=2:3でやや女性が多い傾向がみられますが、これは産婦人科ケース、高齢者に女性が占める率が高いことが影響していると思われます。死亡例は31例(74%)で、後遺障害例が11例(26%)です。
- 最終的結論として、
- 過誤と鑑定された例 28例(67%)
- 過誤とは考えられない例 12例(28%)
- 判定不能(主査・副査の意見が異なる例) 2例( 5%)
です。判定不能例についても第3の意見を聞くか否かは、今後の検討課題と考えます。
[考察]
上記の結果を検討して以下のようにまとめてみました。
「過誤」が示唆することは?
- データベ−スとしての診療録の不備
- 救急診療をはじめとする医療知識・技術の未熟性及び独善性
(開業医・勤務医共にSTANDARDIZATIONが不足)
- 薬剤の過誤使用
適応・副作用・使用量・投与経路の判断の不十分さ
- チーム医療の未熟性(他科との連携も含めて)
- 医療サイドと患者サイドの疎通性が不足
- 施設の診療能力の自己評価の不足
|