medical
 

●  患者はどちらにつけばいいの ●


提供:だいとう循環器クリニック 機関誌「花みずき」


 「ハックション・かぜらしいな、だれか薬屋さんまで走ってくれんかな、ついでに胃の薬もたのむよ」
 こう言って、薬屋さんから薬を買って飲むことも多いのですが、これらの薬は家庭薬とか、大衆薬といって厚生省の承認を受けて販売されているものです。だいたいこれらの薬は、お医者さんから貰う薬よりは効き目は抑えられているようです。
 一方、お医者さんから貰う薬、これを医療用医薬品というそうですが、ごく最近に開発された医療用医薬品、H2ブロッカ−という潰瘍に効く薬が厚生省の承認を受けて平成9年9月から一般の薬局でも大衆薬として自由に買うことができるようになりました。(H2受容体遮断剤・シメチジン、ラニチジンなど)
 この薬は、手術も必要がないと言われるほどの胃潰瘍の特効薬で、今までは、医師の指導のもとに投与されていましたが、この薬が市販向けに転用を認められることになりました。
 そこで、この薬にまつわる厚生省製薬会社医師のそれぞれの思惑が複雑に交差 しているようですから、それについて少し考えてみたいと思います。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


 厚生省では、来世紀にかけて高齢化が加速的に進み、医療費が2025年には破綻状態に陥ると警告しています。しかし、こうした薬が大衆薬として一般薬局で売られるようになると、セルフメディケーション(健康の自己管理責任)という面や、薬の知識の向上とあいまって、医療費の財政救済におのずと効果が現れるのでは…と期待しているようです。つまり「薬は自前で」ということです。

 これについて製薬会社では、今までの医療機関への販売は減るかもしれないけれど、かぜ薬のように大衆薬として市場に出回ると、収益の増加も期待できるので、とりあえず歓迎する。こうして製薬会社は、はからずも厚生省との思惑と一致したようです。
―方、医師側は、本来的に治療を受けなければならない人が、その薬を飲んで一時的に病気が治ったと自分で早合点する虞れがあると言っています。また、これは受療抑制にっながるもので、医療機関の経営も苦しくなると渋い顔をしています。

 こうした、三者三様の思惑が絡み合っていますが、日本大衆薬工業協会は、「医療財政を補完する唯一の方法はセルフメディケ−ション(健康の自己管理責任)であって、この点、大衆薬転用の意義は大きい」と自賛しています。
 しかし、この思惑は、

薬箱    厚生省は、老人の医療費増加に対処する為の、
   製薬会社は、販売量を増やす利害関係の為の、
   医療機関は、収入の減少を懸念しての思惑であると思います。

 患者は、特に老齢の患者にしてみれば、私たち患者の為のものというより、薬をめぐる三者の利害関係の思惑のみに集中して、私たち患者は蚊帳の外に放り出された感じは拭えません。
 ともあれ、患者にとって、セルフメディケーション(健康の自己管理責任)は、新しい言葉として、大切な事として、真剣に受け止めていきたいと思います。

index next back
[ HOME ]

(C) Copyright by Reference,inc. 1997-2005(無断転載禁止)