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● 一般病院における痴呆性老人への対応と問題点 ●


提供:痴呆性老人症例研究会 K病院、作業療法士


1.リハピリ処方上の限界

病院では、医師処方が出されてはじめてリハピリ実施が可能となる。従って、痴呆性老人で対人的関わりが必要と思われる場合でも、医師処方・指示をまず受けなけれぱならない。一般病院のリハビリ室は身体障害者の基準で開設認可を受けているため、脳血管性痴呆など身体疾患を合併したケースが多く、アルツハイマーや老年性痴呆の診断でOT処方を受けることはまれである。
2.方針と手段に対する職種間での共通認識
痴呆に対しては、PT、OT、看護婦が医師に処方を依頼し、整形、脳外科など医師から「ADLの向上」目的に処方を受ける。しかし、精神面の援助を行うかどうかは処方を受けたセラピストの判断・力量に委ねられている。その際OTが用いる治療手段は、移動から創作活動まで幅広く、他職種には暖昧に受けとられるため、カンファレンスなどで方針・手段の共通認識を得ることが必要である。
3.二次障害での痴呆対策
一般病院では、肺炎や大腿骨頚部骨折後などで二次的に起きる痴呆症状への対策が不十分である。マンパワー不足の問題もあるが、病棟レクリェーションやグルーブワークなど取り入れながら、他職種と同じ視点で関わることを重要としている。
4.一般病院での痴呆性老人の退院基準
退院は医師が判断するが、在宅での生活能力の視点がその基準とはなっていない。平均半年位で退院となり、老人ホーム待機者もいるため老健、老人病院へ紹介するなど生活保障を整えて退院となる。精神科外来のある一般病院では、自宅で家族による介護が可能であり、外来で診れるケースが対象となる。 家族がみれなくなった時、院内の医療相談室等と連携し福祉分野につなげている。また外来の痴呆性老人が身体疾患を併発した場合は、入院期間の制約など受け入れに問題がある場合が多い。
5.身体疾患併発の場合のエンカウンターリエゾン
痴呆性老人が内科や外科的疾患を患った場合、一般病院が拒絶し問題となる。一つの病院でだけでは、問題を集結することが不可能なため、他科依頼が行われる。お願いする際には精神科医が出向いたり、スタッフどうしが依頼先の同職種とコミュニケーションを持つように努めなければならない。
常に「リエゾン」、つながることで「相手に頼んだらここまでしてくれたから、頼まれたここまでする。」という個人の連携能カを強め、力になりやすいスタッフへの理解を深めることが大切である。
6.福祉から求められる医療の役割
老人ホームにはガンを患う痴呆性老人や、ろう便など問題行動をもたれる方が多いので、痴呆疾患センターと連携し医学的対応の可能性や介護上の問題を教わっている。痴呆に対する正しい診断、相談などを医療に求めたい。
7.痴呆に対する精神科医の特徴
痴呆では介護者の問題が重要となり、精神科医には家族の話を聴く余裕をもつ場合が多い。中には、家族を把握し家族に処方を出しているケースもたくさん見られる。また保健所の委託医に精神科医がなっているため、福祉制度や社会資源、地域活動について知識をもっている。

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