医療事故調査会


医事関係訴訟委員会への要望書
 
■医療裁判と医学的鑑定の実態

医療裁判と医学的鑑定の実態

医療事故調査会 代表世話人  森   功

評価:

1. 裁判であるから被告側代理人は最大限被告の弁護を行うのは当然である。従って、被告側医学的鑑定は当然「被告側には過誤はなかった」という前提で書くように依頼されるのもまた当然である。結果的には「学術的医学鑑定」が「法廷における被告擁護の為の医学的様式による意見書」的内容になっている。

2. 原告から依頼されるケースの多い医療事故調査会の鑑定は「その事故例が医学的な過誤の結果として生じたのか否かを裁判に先んじて鑑定している」ことが多く、あくまでも公正、中立な学術的鑑定を行っている。原告に不利な鑑定であれば裁判に至らないのである。

3. そもそも医学的鑑定は枝葉事項には解釈の相違もあろうが大綱においてはそれほど大きな違いは生じない。学術的議論の要する事項は科学的根拠を提出し合って第三者によって評価されればよいことである。

4. 従来より指摘されている通り、被告側=医療側の鑑定と裁判所鑑定では上記の点でいささかの違いがあってしかるべきであるが実態は裁判所鑑定でも医療者擁護の方針が強いことは否めない。これは日本の医療者の根底にある講座制によって培われた閉鎖的、相互批判のない、同族意識によって生じる現象であろう。でなければ卑しくも日本の医学会のリーダーが安易に上記のようないびつな鑑定を行うはずがないからである。

5. 如何なる鑑定であっても最終的に裁判官が自らの判断を自らの学習の結果として行われることが肝要である。しかし、ケースの診療工程で医学的重要性をどのポイントに置くかということは日常診療にかかわっていなければ中々判断しがたいものであり、裁判官がその判断をどこまで正確に行いうるのか疑問でもある。

6. 最終的にはドイツの鑑定委員会方式あるいはそれを応用した審査会方式(医師の審判制も加味する)での判定がより学術的にも妥当な判断が下せるものと考える。

以上

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