ホスピス
 

● 黄色の薔薇に囲まれて Vol.2 ●


―愛する人と別れるとき―


    私は主人に黙って手術をして頂いた先生に「考えられる原因を教えて欲しい、そして返事は必ず私宛に」とお願いして手紙を書きました。主人は主人で私には知らせず信頼している先生に相談し検査を受けました。
エコー・CT・シンチは異常が無いと安心していたところに、執刀医から主人に電話があり、「痛みがあるならMRIを撮れば原因が分かるかも?」と言われ、私が内緒で手紙を書いていたことが簡単に分かってしまった。あれだけお願いしていたのにと腹立たしく思いましたが、かえってお互いの思いやりと不安が理解できました。
 緊迫した毎日から抜け出せたような思いになり、痛み止めを飲まずに痛む体でどこまで行けるか試すようにがん患者さんの集まりに参加し頑張った日「今日はよく頑張ったとほめてやりたい」と日記に書いてあります。それから検査を受ける決断をすることになりますが結果が分かるまでの間、主人の日記から揺れ動く憩いを抜粋します。


1月22日:検査を受けると決めた日

 今日、不思議な感情を何回か感じた。お腹のあたりから病気が良くなるような手応えを感じた。こんな感じは初めてだ。自分に与えられた人生は悪くない。
私には目標ができた。病む人の―人として話しをしたり、助言したりして、世の中の役に立つ事ができればどんなに素晴らしいだろう。

1月30日

 散髪に行く。嫁さんにはいつも辛い思いばかりさせている。分かっているのだがつい、自分中心に走ってしまう。すまない。
神経痛は相変わらず。この何日間、色々あってあまり笑っていない。笑おう。
いつもまず、笑顔から入れたらいいのに。
「死」の受容と言うことを教えられた。
神よ、私をお使い下さい。私を何かの役に立てて下さい。少しはそう思えるようになった。痛みの中で出来ることを捜していこう。

2月5日(前日、がん患者の勉強会に出席する)

 昨日はとてもいいt日だった。嫁さんと笑顔で話せた。有り難う。
勉強会でいろいろ喋る機会があった。果たして役に立てたかどうか?
肛門がしびれてしまりにくい感じ。痛みがあって眠りにくい。
なんとしてでも、元気でいたい。又、役に立てる事があれば嬉しい。
"生きるに時あり 死するに時あり"

2月9日:検査桔栗を知る

MRIの結果 再発(骨・肺)
放射線をあてる。
再発したら仕事を辞めると決めていたので辞める。しておかなければならない事をしていく。受容・別れ・そして再生‥
放射線もあてよう。化学療法もしよう。何でもする。頑張る。1度や2度のアタックに負けてはいけない。仕事を辞めるのはあきらめではない、希望だ。
エネルギーの充電だ。(この日の文字はとても荒く乱れている)

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