ホスピス
 

『第8回ホスピス症例検討会』より

症  例:46才 女性

病  名:肺がん、多発性骨転移

家族構成:一人暮らし、明石に姉一名、関東に兄一名、姉二名

【病歴要約】

    H7  −腰痛、左大腿部激痛、他院にて肺に2cm大の腫瘍を指摘される。
       本人に告知され、詳しい手術、化学療法の説明を受けたようだが、それらを拒否
       し、民間療法を選択して自宅療養となる。
       下肢、背部痛増強し、入院による疼痛緩和のための放射線照射を受けたが、副作用
       強く中止となり、再び自宅療養。
  H8.6.18−自力での生活困難となり、M病院ホスピスに入院。
       その後、積極的に疼痛コントロールを行うが十分に痛みは取れず、
       積極的な痛みもあり、情緒不安定な状態がしばしば出現する。
  H8.7.22−痛みが増強し、辛くて泣かれる。
  H8.7.23−取れきれない痛みがある事は理解できているが、ホスピスに入院したら痛みが
       取れると期待していた事とのギャップに悩んでいるとの本人の弁。
  H8.8.11−調子が良い時は外出への意欲も出ている。
  H8.8.22−山形の娘に手紙を出したり姉の働きかけで、娘が会いに来ることが決まる
  H8.8.24−娘が会いに来る。当日行われたボランティアによる夏祭りに姉、娘、姪と参加し、
       笑顔や食欲も出る。表情も大きく変化した。
       娘のかかわり以降は嬉しそうな表情も多く出て、精神的にも安定している。
  H8.9.06−意識レベルが下がる。
  H8.9.12−永眠される。

【検討事項】

 1.痛みの判断基準は、どんな方法が適切か
     フェイススケール法、5点法、10点法などがあるが、いづれにも一長一短がある。
     患者さん自身も、医療者も痛みを客観的に判断するには隔たりや見落としの可能性
     がある。

 2.精神的痛みをどう緩和するか      当初は身体的な痛みの緩和を重視しすぎて、精神的、社会的痛みへの対応遅れた。

 3.患者の心の支え      長く一人暮らしのため、キーパーソンが判りにくかった。最終的には17年前に      離婚のため別居した娘さんの登場が大きな精神的な安らぎを与えた。

 4.一人暮らしの人が入院した場合      一般的に一人暮らしの人に対しては、精神的な支えをスタッフ、チャプレン、      ボランティア、あるいはつき合いの深かった人達によって補償する必要がある。

 5.ボランティアの立場      今回の場合、ボランティア活動も症状の緩和に役立ったが、ボランティアの      かかわり方については今後も検討が必要。

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