●8月7日 金曜日 | |
4時ごろに目覚める。外は真っ暗で出てみるとさらに霧が深い。さすがに動物たちもこの時間にはいないようだ。ラガーシャツは暖かくて着心地がいい。霧が風のためにアイスクリーム製造機の中のごとくかき混ぜられている。少しずつ明るくなっていくなかで霧が渦巻き流れる情景を見ていると頭の中まで真っ白になり、無声映画の中のようで、幸せな気になる。こんなに静かな動はめったに経験するものではない。
ジョージ達は昨晩アウトスパンホテルに戻っているため、皆さんの移動に阻喪のないように気を使う。少しお疲れ気味なのかフットワークが重い。7時発のバスに乗らないと1時間遅れることになるので気をもむ。なんとかみなさんをバスに詰め込んでホテルに戻る。今日はSRL社の人達が一足先に帰国するので寂しくなる。キリンが見たりないとのことでナイロビゲームリザーブに立ち寄る積もりだとスティファンが話している。朝食後、分かれる。
ナンユキという赤道のある町から、イシオロ経由でサンブルまで4時間のドライブが待っている。ナイロビの北方、約400km、サンブルは標高1000mをきるのでいささか暑いと思われる。イシオロを過ぎると土道になりサファリらしい上下動が骨盤に響く。途中の赤道直下、ナンユキでは時間の関係で写真を撮るだけにする。あさってにはまた別のメルー街道の赤道を越えて南半球に戻ることになり、トイレの水と同じように頭の中も回転が逆になるのかしら。昼過ぎにサンブルに到着。着いた途端にジョージがナイロビで爆弾テロがあったという。マラウイ、ダルエスサラアムでも同時に起こったとのこと。えらいこっちゃ、これは。SRL社の人達はナイロビに入れたのだろうか気になる。こういう事があると全てのナイロビに入る道路は閉鎖されるから、入ってなければ帰れなくなる。スティファンに連絡がつくまでどうしようもない。電話はナイロビも海外もつながらない。
こうなりゃ慌てても仕方がないのでシャワーでもかかることにする。それと洗濯に出す。シャワーの水が濁っているのでとても洗濯する気にならない。トイレの水の流れ方が悪い部屋、シャワーの出にくい部屋などいろいろある。若い子が一人熱を出す。仲間が島野さんにもらったインスタントオカユと梅干を持っていってあげている。これですぐに元気になるところが若さである。サンブルゲームロッジは以前にも泊まったことがある。川は相変わらず茶色に濁って、ワニが日がな一日真中で眠っている。まったくなまけものだ。夕方には食事をもらうため岸に上がってくるがただそれだけが運動である。かわいくない。
川辺のレストランで昼食をとり、一休みしてイブニングサファリに向かう。やはりここのゲームリザーブはいい。ところで、辻君が小村先生にゲームの意味を尋ねたら、さすが小村先生、これは野生動物の意味で、ハンティングのゲームからきた言葉でしょう、とさらりと答えておられた。尊敬。動物では、キリンが素敵だ。Northern Giraffeのなかでもソマリアから北ケニヤに生息するReticulated Giraffeで、大変美しい。白い足、あざやかに区切られた明るい茶色の斑紋など南のものと比べて数段きれいだ。それにしてもアカシアの葉を食べているがあの鋭いとげは痛くないのだろうか。キリンの群れもハーレムでスティファンによれば大変忙しいそうだ。ライオンがそこにたむろしている。若い。満腹なんだろう、まったく無関心だ。軽く吼えるだけで格好がつくからえらいものだ。象もすぐ近くによる。子供を中に囲んで葉っぱを食べている。一頭が耳をバタつかせ始めた。そろそろじゃまするなって怒るよ、ほら、威嚇的に鼻を上げてこちらに来始めた。ドライバーのMr. Oguthaがさっと離れてくれる。
途中、小高い丘に上ったところで小休止する。外に出てみると細かい砂地で、ブッシュがいたるところに生えている。小鳥が群れをなして低く飛び交っている。一望する。名前がわからないが、ニーロ山なのか?遠くの山々のシルエットをバックにサンブルのゲームリザーブが展開する。背の高くない木々、ブッシュ、川辺に立つ背の高い木々、砂煙を上げているサファリカー、まさにファンタジーランドのパノラマビュウである。気持ちが大きく、おおらかになる。素直で謙虚さがこみ上げてくる。子供の純真さが懐かしくなる。感激。さらに走ってエランドという大きな鹿に出会う。この鹿の肉は、この後、エンブやナイロビでの昼食に供され、おいしかった。脂肪分の殆どないヘルシーミートである。大いに満足してロッジに戻る。
ジョージが皆さん無事にナイロビに入り、国立公園にも行けたと報告する。なによりだ。明日は何とか日本に無事を知らせるように依頼する。再度シャワーを浴びて夕食までエアログラムをしたためる。蚊取り線香の香りは鎮静作用もあるのか、単にノスタルジアを刺激するためかいずれにしても気持ちが落ち着いて好きである。ふと見ると窓辺に鳥が止まっている。いろんな種類の鳥がカップルであったり、群れをなしたり、あるいは一羽ぼっちで遊んでいる。バードウオッチングのコースもあるそうで好きな人にはたまらないだろう。
夕食はサファリのために八時ごろに始まる。われわれの席の担当はマサイのおじさんで人がよさそうだ。相変わらず南アフリカのワインを愛用し、老いも若きも楽しんでいる。食事はそれほど変化はないがおいしい方だ。食後は川辺に作ってあるバーでブランデーを楽しむ。若い子達と話していると時代の流れをいやがおうにも感じさせられる。この若さでケニヤの北のはずれまでやってきて、人と自然とそれらの歴史に触れ、先輩に学び、社交を覚え、人生に影響を与えられたことを後に知ることになる幸せを甘受している。日本は間違いなく進歩しているのだ。明日は皆さん自由に過ごしていただく予定である。辻井先生はロッジでのんびりと絵を描かれるとのこと。小生は若いのに付き合う予定。
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