● スウェーデン、ドイツ、オランダ三国の視察報告 ●
〜医療の品質とエラー管理〜



北ドイツ医師会調停所
Mr. Johann Neu 弁護士 調停所の事務長

ドイツの各州は連邦議会の決定を具体化し、医師会の対応などの場合には地方分権というか州の独自性が強くそれが調停所の構成、運営にも影響している。北ドイツ医師会調停所には医師50人、弁護士4人が携わっているが他の州では医師のみ、法律家のみという団体もある。(ちなみにデュッセルドルフの北ライン州医師会鑑定委員会は弁護士1名、医師4名で鑑定委員会を構成していた)
組織規模:全ドイツの1/2をカバーする大きな調停所である。
1976〜2002 北ドイツ医師会鑑定・調停所への申請は53,505件
2002 単年では4,010件
1990から急激に増加し始めたが2001をピークに昨年はやや減少してきた。これは疾病金庫自体が鑑定するようになって減ったものと思われる。
医療事故案件対応機関:
裁判所
医師会
疾病金庫
これらの機関で20,000件以上を取り扱っているが、
研究所や特定のリサーチのための民間鑑定所があり、2000EUほどで鑑定するが、中立性が疑われている。
調停業務は医師会のみが行っており、疾病金庫でも過誤があったと認めると当該医師と損害賠償保険へ直接結果が届けられる。疾病金庫の鑑定に不満があれば他の調停所にうつる場合があり、"鑑定所ホッピング"と呼ばれる。
年間3000件のケースは全国的に見て最適の医師に鑑定を依頼する。他の調停所では限定した医師で鑑定している。鑑定書が出来上がるとそれを患者及び損害保険に送る。鑑定に問題がある場合(過誤判定?)調停所医師が再検討することがある。17%の鑑定は調停所で鑑定とは異なった結論が出される。その結果は鑑定医にも提示される。鑑定医は直接責任医にコンタクトできない。鑑定書に医師、患者、保険が合意したとしても調停所がクレームをつけることがある。手術で合併症の発症率が3%あることが術前に説明されていると鑑定では過誤が無いと判定されるが、調停所としてその責任医師が"合併症の回避行為"を行ったのか否かを検討し、鑑定人の評価を行う。これは裁判の場合でも、通常は医療過誤訴訟は患者側の立証責任であるが、合併症による重篤な結果は"医師が無罪を証明"しなければならない。鑑定では資料不足である場合は責任医師が補填しなければならず、鑑定人がそれを無視して誤った結論を出すことは許されない。手術室への移動時に転落した事故等は医療側にしか事実がわからないために、医療側での過誤の有無を証明することが求められる。鑑定結果は障害補償決定に活用される。
鑑定費用は調停所から支払うが過誤判定が出れば保険に請求する。鑑定に要した時間、複雑さ、重要性によって300EUから数千EUまで鑑定料は異なる。 鑑定人は4000人が登録されているが引き受けるか否かは鑑定人の選択で断ることも可能。 50人の協力医で月に一度検討会があり内容を検討する。
相談内容は一般的な相談、保険の使用についての説明などが多く、鑑定依頼にいたるケースはそれほど多くはない。患者が訴えても医師や保険が拒否する場合や患者が取り下げる場合がある。患者の状況により更なる障害などの新しい事実が発生すると更なる鑑定を要する場合もある。
調停所は1970年代に医療裁判の不公平性が認識され始め患者と医師の関係が崩れ、医師の立場も裁判では悪くなってきたために"補填"として設けられ、運営費用は医師会、賠償保険からの手数料でまかなわれている。調停所の判定は拘束力は無く、その鑑定による証人採用も無い。調停は他の医療職を対象とする場合もある。法務省としては裁判量の減少を期待しているが州によって異なる。1998年には1097件が調停所で判定され、8.6%は裁判に持ち込まれたが91.4%は裁判が回避されそのうち30%は患者有利の決定がなされ、86%は保険から補償された。一説には94%が補償されたとも言われている。
過誤例の活用については、調停所はあくまでも賠償への作業が主体であるが統計的な結果は医師にも報告される。北ドイツの方式を全国的に統一したものとする期待がある。3年前から医師の専門性と医療技術の妥当性を発生したエラーケースを通じて特徴等を分析している。社会的評価は一般的には"医師よりの鑑定"が是正されてきているとしている。法未詳は裁判官は多忙で、非専門家であり全面的に医療事故裁判に関わってゆくのは不可能である。

   


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