介護保険
 

● 公的介護保険 ●


介護保険が地域の老人関係を壊す?


提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/

 介護保険制度の施行に伴い、小規模な自治体では老人同士の関係がギスギスするのではないかと心配をしている。
 全国にある約3230の市町村のうち、町村は約2560自治体。内人口一万人未満の小規模な町村は約1520で町村の約60%を占めている。

 たとえば人口1万人で高齢化率が20%とすると、65歳以上が約2000人。うち要介護認定者を15%とすると300人となる。第1号被保険者として2000人が負担している保険料含めた保険財源から介護給付をこの300人が受けることになる。
 医療保険の場合は、乳幼児から高齢者まで誰もが保険給付を受けることが可能であり、またその可能性も高いため相互扶助ということが良く理解できる。また、その給付額も他人にわかるわけでもなく重複受診、過剰投薬や高額治療も誰に遠慮することなく利用できる。

 現行の措置制度でも、納税額の一部が民生費に回っているのであって、自分の税金が全て福祉サービス利用者の費用になっているとは考えない。また福祉という弱者救済策として社会的にも相互扶助ということで理解されている。
 しかし今回の介護保険制度では医療保険と違い、負担と給付の関係が近すぎて誰が誰を支えているかがあまりにも見えすぎることである。

 たとえば他人からでも状態象が見えることにより、おおよその要介護判定のレベルがわかり、それに伴い給付費が6〜35万円まで推し量られる。
 もし口さがない老人が、老人会等の集まりで「○○さんは、介護度2で毎月17万円の福祉サービスを受けておる。つまり私ら何人かの月○千円の保険料で、○○さんを支えているのだ」というように相互扶助の社会保障制度を理解せずアジるようなことが生じれば、本人や家族は今まで「お上の世話になりたくない」と思っていたことの相手が変わり「近所の老人達に肩身が狭い」と思うことにはならないであろうか。利用者の恩恵とそれを可能にしている人たちとが向かい合わないであろうか心配するのである。保険料が上がれば、直接その利用者に悪態をつくのではないだろうか。嫌みの一つでもいうのではないか。

 心配はこのことである。現状で高齢者の多くは介護保険が掛け捨てになるという理解をしており、10人に8人は使うことがないかもしれない制度だと考えている人が多い。小規模な自治体では、地域や字ごとにあまりにもその構図が具体的な現象として見えることになる。全国的に見ても、50%近くを占める人口1万人未満の小規模な自治体では老人同士の利害が対立し、少ない年金からの保険料を徴収されることに理解が得られず滞納者や未払い者が増え保険制度そのものが維持できなくなるのではないか。
 制度実施を1年後に控え、実際あり得るかもしれない高齢者の情緒面からも対策を講じておく必要があるのではないだろうか。これらのことが杞憂で終わるように今から高齢者に対して正しい啓発活動を進めるべきではないだろうか。

indexback

(本文の無断掲載ならびに転写は、お差し控え下さいますよう、お願い申し上げます。)


[ HOME ]

(C) Copyright by Reference,inc. 1997-2005(無断転載禁止)