介護保険
 

● わがままたつじいさんの診療日記 ●


介護保険がやってくる


提供:さくらいクリニック 院内情報誌より
http://www.reference.co.jp/sakurai/

 「介護保険っていったいなんだんねん。老人会でも皆いうてますんやけど。」
診察もそこそこに喘息持ちだがタバコが手ばなせないたつじいさんが切り出した。
「わしはあんな保険入りとうない。」
「いやあ、あれは任意じゃなくて強制保険ですよ、生命保険と違う。保険料は年金から天引き。」
「かってにそんなことさせん。」
「そんなこというても、法律できまったんですよ。」
「いつそんなん決まったんや。けどなんや寝たきりにならんともらわれへんのでしょう?」
「そうじゃなくて介護の必要な程度に応じて要介護認定というランクづけをして、えーっと、一番重いのが要介護5で、6段階に。それに応じたサービスが受けられるんです。」
「そのランクってどうやって決めるんでっか?」

「調査員が実際に家に調査に行っていろいろ聴き取り調査するんですよ、歩けますか、とか立ち上がれますか、食事や、トイレや入浴が可能かとか。それとかかりつけ医の意見書。」
「なるほど。その調査員が来るときだけ寝たきりになっとらええんか。」
「そんなんだめですよ。」
「医者の意見書ちゅうのは?先生書いてくれますの?そやけど向かいの孫一さんなんか脚が不自由で歩くのなんぎしてはるけど、今は別に医者にはかかっとらんで。医者にかからんと書いてもらえんのやろ。」
「ええ、まあ。そうゆうことですわ。その調査員の調査をコンピュターで解析した一次判定とかかりつけ医の意見書を元に介護認定審査会ちゅうとこで決定する。」
「なるほど、そしたらその委員の人によろしゅういうといたら...」
「そんなんだめですよ。それに認定委員会ではほとんどランクの変更できないらしいですよ。ほとんど一次調査どおりとか。」

「そしたら調査に来た人によろしゅういうて...」
「それもあかんて。」
「わしやったらどのくらいのランクに?」
「喘息とかあっても、だめでしょうね。自立ですよ。」
「自立って?」
「介護保険は受けられない、ということですよ。」
「いっこも自立してへんがな。ばあさんがおらんかったらめしもたかれへんし洗濯も掃除でけへん。十分要介護や。」
「いやそうゆうのは介護保険では...」
「そんならわしはやっぱりはいんのやめや。」
「だから任意保険やないって言うてるでしょう。」

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