社会環境

● 「結核非常事態宣言」に思う ●

 

結核陽性者の割合
図2

 ここに、驚くべきデータがあります。 つまり47年には、成人を迎えた人のおよそ60%が陽性でしたが、現在(97年) には2〜3%の者しか陽性になっていないというグラフです。 なんという昔と現在の違いでしょう。現在の若者は結核菌に触れたことがない、限りなくゼ口に近いのです。ひとたび結核菌がどこからかもちこまれれば集団感染に、いたってしまう状況がよく理解されましょう。

免疫力を高めるために何をするか

 現在、日本の疾病構造を考えると、つい3大生活習慣病に眼が止まりがちです。 つまり、がん・心臓病・脳血管障害といった旧来は成人病と称されていた疾患群です。しかし、なんと第4位には「肺炎」という感染症が控えています。しかもこ れは全年齢層を網羅しての話しであって、75才になると死亡率のトップはこの肺炎ということになります。

 高齢者には、コレステロ―ルより肺炎の方がはるかに危険! インフルエンザで肺炎になったり、結核菌が胸の中で動き出さないためには、しっかりとたんぱく質をとりましょう。卵や魚も、さらには肉も脂身の部分は捨てながらしっかり摂って、血液の中のたんぱく成分とリンパ球を増やしましょう。自分の、 血液中の蛋白濃度に関心を持ちましょう。この数字を知らない人はいつでも診察室で尋ねてください。

発病した場合の治療をどうするか

  「非常事態宣言」では、結核の再興が 指摘され、地方自治体、医師会、病院関係団体、老人関係施設、研究機関、関係学会および国民各位に対してこの問題の再認識と対策の推進を呼びかけています。 しかしながら、もし新しく結核を発症した場合や再発したときに、治療の体制はどうなっているのでしょうか。
 新規発生率は、人口10万に対して33.9人ですから、たとえば人口48万の姫路市では毎年163名の新たな患者が出ます。その対策は十分でしようか。
 残念ながら、現状はその患者や家族に必要以上の苦痛を強いるものでないですか。 厚生省は、この数十年にわたって―貫して結核への治療対策を削減してきたと思います。

  すでに国立姫路病院から結核病棟が姿を消して久しいものです。新規発生患者の すべてが入院加療の必要はありませんが、新たな患者およびその家族に対して、医 学医療知識が十分に与えられ、必要に応じて清潔な療養環境が提供されて欲しいも のです。とくに、多剤耐性の結核菌の登場や、肝機能障害などで定番の有効な治療 剤が用いにくい場合などいくつかの治療困難なケースも常に指摘されているのです から、結核の治療のための強いチームを養成し、配置してもらいたいものです。
  「非常事態宣言」を国民に発すると共に、厚生省自身が新たな取り組みをやって いただきたい。国立病院にその体制を作るための費用なら国民は歓迎するのではありませんか。

index back
[ HOME ]

(C) Copyright by Reference,inc. 1997-2005(無断転載禁止)