ホスピス

● クスリはリスク ●

提供:さくらいクリニック 院長:桜井 隆
  読売新聞 「今日のノート」掲載



 お年寄り同士の親切心からだろう、まんじゅうをやりとりするように薬をあげたり、もらったり・・・・が、少なからずあるようだ。その結果、当然、事故が起きる。
 ある老人が腹痛を起こした。痛みはしだいにひどくなり近所のおばあさんが持ってきてくれた「腹痛の薬」を飲んだ。痛みは治ったが、尿が出なくなった。苦しくて辛抱できず救急車で病院へ。導尿してもらいやっと尿が出た。  この薬、胃腸の痛みをとめる作用はあるものの、前立腺肥大の人では尿が出なくなる副作用がありそれを知らずに飲んだのだ。

 兵庫県尼崎市で開業している桜井隆医師(42)が、お年寄りの患者たちと出会いをつづったコメディー風の近著「先生・・・すまんけどなぁ・・・」(エピック刊)に登場する笑えない話である。
 腹が痛いので、近所の仲間から「血液の流れを良くする貼り薬をもらい、五枚貼ったところ具合が悪くなり、ふらふらになって受信したおばあさんもいる。

 この貼り薬は、実は心臓の血管を広げる心臓病患者用のもので、それを5倍量も使ったのだから血圧はふだんの半分に下がり、危うく命にかかわるところだった。
 薬のやりとりは、桜井さんが下町で開業してみて気づいたことで病院勤務医時代には「想像だにしなかったことだ」という。

 薬を体内に取り込む方法はいろいろ工夫されていて、湿布は痛み止め、坐薬は熱冷ましという常識は必ずしも通用しない。

 ある調査によると、飲まなかった薬をどうするかについて尋ねると「だれかにあげる}が2%だったそうだ。これが危ない。処方された薬は、その患者の病状に効果がある個人専用のものだ。もったいないからと、あげたりもらったりは、クスリではなくリストとなる。

『先生・・すまんけどなぁ・・・』
著  者:さくらいクリニック   桜井 隆

「検査!入院!手術!それとも・・・?」
たつじいさんが選んだ道は・・・
あなた自身や あなたの家族ならどうしますか?
(Drさくらいの街角カルテより)

発行所:(株)エピック社
仕 様:B6判 240頁
定 価:本体1,300円(税別)
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