ホスピス

● 黄色の薔薇に囲まれて Vol.4●
―愛する人と別れるとき―

 

 主人の遺骨を返して欲しいと、お墓を本家のお墓に移したからと連絡があってから、主人が―番嫌がっていた事なのに……。と気持ちがどんどん落ち込みだし、何もかもがイヤ になってしましました。そんなとき、「ひまわりの会」で遺族になってからの生き方をお 話しさせて頂き、これからをどう生きていくか考える機会を与えていただきました。

 ポランティア先の患者さんにも「最近、落ち込んでアカンねん」というと、「それで落 ち込んでるの?とてもそんなふうに見えないワ!いつも元気やないの!」と、あっさり。 だいとうクリニックの田中さんにも「立ち直ってイケイケのように見えてますよ」と言わ れます。これには、自分でも確かにそうだと笑っていますが、そうでもして、テンション を高めておかなければ、簡単に「鬱」になって、立ち直れなくなりそうな気がして、つ いついカラ元気を出してしまいます。でも、不思話なもので、元気なふりをしながら考え 行動しているといつの間にか本当に元気になっているのです。感情はそのままで、行動す る事で変えられると思います。

 私は特に信仰はしていませんが、辛い時、迷った時いつも主人に話しかけてきました。 主人は亡くなりましたが、魂は生きているというか、もちろん私の心の中にしっかりと生 きていますが、何か本当に辛いとき困った時には必ず道が開けるきっかけに導かれます。 これは主人が助けてくれているものと確信しています。

 この度の落ち込みは長く続きましたが、今はすっかり元気になりました。仕事は生計を 立てるため、そのなかで喜びが見つけることが出来れば良し!ポランティアは、主人の遺言 が重たく感じることがありましたが、人の役に立つことで自分を癒すため、出来ること を無理のないペースで取り組んでいこう!と思いました。分かっていても、行動しなければ 変わりうることも変わりません。旅行に行こうかナと計画を立てても、電車に乗らなければ 目的地に着きませんし、窓の外に目をやらなければ移り変わる景色も見て楽しむこと もできません。恐る恐るでも、まず一歩を踏み出さなければ、足踏みぱかりでは前には進 めません。

  今、看護婦として再就職していますが、自動車通勤から電車にすると雨風をしのげる車 に改めて感謝しながらも大変なのは自分だけではないと感じ、又、電車内ので観察をしたり、 歩いている途中での新しい発見を楽しんでいます。
行きは市場の中を通り、あれが美味し そう!これも美味しそう!そのうえ安い!と外食が減りせっせと自炊を楽しみ、帰りはウインドーショッピングを楽しみ、衝動買いをしてすっかり忘れ請求書をみてピックリ! 次のお休みにはあの映画を見に行こう!とか、最近では'魚町'を散策し、ついでにちょっ と1杯と…。私もこんな事が出来るんだ!と驚きながら楽しんでいます。

 今までは、これからどうして生きていこうとか、もし、また仕事が続かなかったらどう しようとかと先の心配ばかりしていました。ある程度の心配は自分を守るために必要だと 思いますが、それにとらわれると身動きがとれなくなり余計に不安が大きくなってしまい ます。今は、出来ても出来なくても1日24時間を30時間にして使おう!という気持ちで 「今日1日」を過ごしています。おかげでイケイケにますます磨きがかかりました。 ただ、以前のように何事にも入れ込みすぎないように程々を心がけてストレスをためない ようにしています。これからも「鬱」に悩まされることもあるかと思いますが、上手に付 き合いながら生きていこうと考えています。

 先日、強迫観念という神経症を克服された方からとても良い言葉を戴きました。
      「人は必ず逢わなければならない人には必ず逢う  
       そのタイミングは一瞬も早からず遅からずして出逢うもの」  
人の言葉によって傷ついたこともありましたが、人の言葉によって癒されてきました。
人との出逢いだけでなく、自分に起こる出来事にも何かの意味があり、必要なことなんだ と考え大事に受け止めていきたいと思います。

そろそろ、私のお話も終わりに近づいてきました。こうして、回り道をしながらの6年 ですが、これも私には必要な時間で、主人の生き様に支えられていると感じました。
 遺族の悲観はとても大きなものです。その悲しみを乗り越えるには、まず、「死」の事実 を認め、悲しみをしっかりと表現する事が大切だと思います。そうすれば、自然にまか せながら大事な人がいなくなったという環境に慣れ苦しまずに想い出せるようになると 感じています。
 思うままに書き連ね、あちらこちらに話しがとびわかりにくいところがあったことをお 詫びし、自分を見つめ直す貴重な時間を与えて下さった大頭先生、田中さんに感謝致します。そして、最後まで読んで下さった方々にお礼申し上げます。有難うございました。

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