ホスピス
 

◆「介護の視点」から見えてくるもの

 私は、在宅療養の形態を以の三つに分けて考えてきた。これまで、医療界や一般社会・マスコミの風潮として、「がん」に対しては、早期診断・早期治療を旗印として、「専門医療機関」へかかることを主眼として薦めてきた。

問題点
しかしながら多くのがんが、本人・家族や医療者の必死の対処にもかかわらず、残念ながら再発・進行する。

この傾向は、2I世紀を迎えて、患者はさらに高齢化し、がんの種類は、胃がん・乳がん・子宮がん・大腸がんといった比較的に検診でも発見されやすく、また治しやすい種類ではなく、肺がん・肝胆膵がんといったいわゆる難治がんへの移行・変質が、がん治療の専門領域から予想されている。

 このような推移の中で、一部の「専門医療機関」では、心のケアまでも含めた、疼痛コントロールや告知・病状説明、全人的なケアに向けて情熱を持って取り組んでいるが、他の医療機関では、病状説明や治療法選択の患者優先といった今日的テーマに対して、医療者側の都合や事情を押しつけている面を多分に引きずっているかに見える。

 いたずらに、「がんは恐い」のイメージを振りまくのはやめにして、十分な痛みのコントロールとできるだけの心のケアに配慮しながら、在宅療養やホスピスでの療養を重視した形態を考えたいものである。

◆痴呆症にはグル一プホ−ムの建設を

 痴呆症に対するケアとしては、在宅で孤独に暮らす、あるいは家族から精神的な迫害を受けながら療養するということであれば、この療養形態が最も患者の残存能力を失わせる可能性が強く、大規模で介護力に制限の強い施設に収容するのも痴呆を進めてしまうケースにしばしば遭遇する。

 およそ、2O年くらい前からスウェーデンで試み始められた8〜1O人を対象としたグル−プホームケアの形態が、在宅と施設のそれぞれの長所を採り入れたものとして、日本でも注月され始めた。徘徊や弄便といった難儀な症状も緩和・解決できたという報告を聞く。

世人の「ぼけにだけはなりたくない」との言葉は、悲惨な生活に置かれた自分を想像しての発言であると考えられるから、私たちとしては、「ぼけてもいいじゃない」を合い言葉として、自分や家族の場合を想定しながら療養形態を整備したい。

◆脳血管障害には、多くの目と手をかけて

 脳卒中の療養期間は長い。関節の運動に十分留意していても、寝たきりに近くなってしまうと、5、6年経過する間には、手足の関節の拘縮が進んで衣服の着脱もままならぬ状態になることがしばしばである。この障害の防止のためには、在宅リハビリの浸透が重要であり、さらにデイケア、ショートステイといった多くの人と接してリハビリへの刺激を常に注入してもらうことが望まれよう。

◆がんには在宅療養が優れている

 1.モルヒネ剤の利用が簡便になり、痛みのコントロールがしやすくなった。
   在宅の方が痛みの出現が少ないと考える医療者も少なくない。
 2.介護力が若く、手が多い。
 3.療養期間が短く、家族が疲弊しない。
 4.医者・ナースといった最小チームでも対処できる。

 専門医療機関とホスピスと在宅チームの3者の、協同のバックアップのシステム作りが望まれる。市民のボランテイア活動参加も芽生えてきた。

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