学童保育
 

● ぽくもやればできるんや ●


 また、全体の目標として、八種目中五種目以上を全員達成すると決めましたが、「そんなのムリや」「できるわけない」と、投げやりな言葉が返ってきます。
 「みんなでがんばろう。そのためにもB君がとべるようになるために励ましてやろう」と提起しても、みんなのあきらめの気持ちを変えることはできませんでした。
 がんばったらとべるようになるということをB君自身にも、またまわりの子どもたちにも示さなければならないと痛感しました。

 かげで、ひとり練習するB君に指導員がつきっきりで、タイミングのとり方やなわのまわし方を教えました。その結果、“なわとぴ教室”がはじまって約二週間後から始めた三日間の特訓で、やっと一回とぺるようになりました。そして、二回、三回ととぺるようになると、まわりの子どもたちも、
 「えっ、B君とべるやんか」とおどろきの声。
 これまで、学童保育でも学校でも、「なんやできへんのか」という言葉しかかけられなかったのが「できるやんか」という言葉が仲間から返ってきたのです。そのことは、B君にとって大きな励みになりました。
 そして、なわとびがとぺるようになって自信をもったB君は、前とび100回という目標をたてました。しかし、「B君そんなにとべるんか」「できるわけないやんか」と思ったのは子どもたちだけではありませんでした。
 けれども、毎日、必死になって練習し、10回、20回ととべるようになると、まわりの子どもたちの目も変わっていきました。それまでひとりでとんでいたB君に対して、回数を数えてあげる子や、「B君、○○回とべた!」と報告にくる子が出てきました。少しずつ仲間として認められてきたのです。仲間に認められることが、B君の力を大きく飛躍させたのです。B君が前とび100回の目標を達成したとき、子ども たちも指導員も思わず「B君やった!」と歓声を上げていました。
 その日の日記に、B君は次のように書いています。

 きょうは、なわとびお(を)しました。何回もして103かいできました。わたなべで(と)い(っ)しよのかずになりました。そしてはじめのうしろとびは6でしたが、10になって7きゅうになりました。あと1きゅうわたなべにかけていく。

 B君は、このあともさらに意欲的に取り組み、前とびで300回以上とぶなど、五種目の目標を達成しました。B君のこのがんぱりが、全員五種目以上目標達成の大きな原動力にもなったのです。
 入所当時集団のなかに入れず、みんなから仲間はずれにされ、いじめられても「なれてるからええねん」と部屋のすみで小さな声で話していたB君が、なわとぴ教室の取り組みを通して仲間から認められ、励まされて、大きな自信をつかんだのです。逆に、B君の成長が子ども集団をも成長させることにつながったと言えます。顔を紅潮させ「ぼくもやれぱできるんやなあー」とよろこびいっぱいに話すB君の姿をとおして、学童保育の集団のすぱらしさをみました。


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