1. |
患者は35歳:心筋梗塞、61歳:脳梗塞(微小脳幹部)の既往があり。 |
2. |
平成2年12月胸痛があり、平成3年2月某大学病院(心臓外科)にて冠動脈造影を受ける。
左冠動脈は#6(前下行枝)と#13(回旋枝)が100%閉塞で右冠動脈からの側副血行を認める。左室造影は心尖部に無動領域あるも心室瘤はない。 |
3. |
偶然、執刀者が身体障害認定を行っているが、3級で、臨床所見は動悸息切れのみで狭心痛はなしとしている。内科療法で狭心痛はなく、仕事で台湾へ出かけるなど「安定型狭心症」であったが循環器内科での手術適応の検討をうけることなく心臓外科での診療に終始した。 |
4. |
手術のインフォームドコンセントとしてカルテには以下の内容が記載されている。
1) |
"バイパス術を受けなかった時の5年生存率は20%以下":
「虚偽の根拠」が記されており、そのようなデータはない
米国の報告では(教科書記載)5年生存率は85−90%である |
2) |
"2本つまりかけている":
前下行枝は100%閉塞⇒35歳時の心筋梗塞の原因
右冠動脈は50%狭窄⇒直ちに手術、インターベンションの適応ではない
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3) |
"心機能が2/3程度"
駆出率56%で正常(>60%)に近い
脳梗塞後の左不全麻痺のために激しい運動は出来ず、狭心痛も平成2年はない |
4) |
"心破裂の可能性"
27年前の心筋梗塞による石灰化した無動領域(瘤ではない)は破裂しない |
5) |
"心臓が腐っている"
線維化、石灰化は腐っているのではなく、瘢痕治癒機転である |
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5. |
当時同大学ではMRSA感染が多発し、心臓外科でも学会にまでその防止策を報告していたが、本例のように実際には何ら注目していなかった。 |
6. |
患者は術前に「咽頭痛」を訴え、看護婦は「発赤を認め」主治医に報告し、「咽頭培養」が行われたが「結果を見ずに手術は行われた」。手術翌日にMRSA検出の報告がなされた。死亡後スワンガンツカテーテルという肺動脈内に留置されていた管の先端よりMRSAが培養されている(=血管内にMRSAが侵入していたことを示す)。同室患者にMRSA保菌者がいた。
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7. |
平成3年6月13日:術後出血のために再開胸手術を受けている。
6月15日:心室頻脈、心停止、SIRS(全身性炎症反応症候群)の状態を示した
*註:SIRS+感染の存在=セプシス(敗血症と同義)
6月18日:多臓器不全に移行して死亡した |
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