● スウェーデン、ドイツ、オランダ三国の視察報告 ●
〜医療の品質とエラー管理〜



患者の権利保護団体 Rechtsanwaltssozietat
Hartwig Meyer氏 弁護士 

 1995年に設立された医療過誤被害者の団体で85人の会員で構成されている。医師、看護師が所属している。ドイツ国内の患者の権利を確保するための団体であって、イギリス、ポーランドの団体とも交流があり、ブリュッセルにEUの中枢があり、そこを中心としてEU全体のレベルの連合体の立ち上げを期している。そこではEUの患者権利憲章を作成したい。弁護士としては医師賠償責任法に関わる仕事をしている。ドイツでは患者の権利主張が向上しているが、通常は患者が過誤であることを立証しなければならない状態が続いている。過誤が大きく、重大な欠陥を来している場合−再調査する必要ありー医師に無過失であることの立証責任が求められる。患者に発生した事故による直接的な障害と共にその後に患者にもたらされる二次、三次障害にも対応している。
SW方式を評価しており、医師の賠償保険という面でもその導入を期待している(SWでは保険団体の連合体が、社会保険庁、その下部のHSANの決定とは別個に患者からの申請により賠償の適否を自動的に裁定し、賠償を行っている)。ドイツでは民間保険によるカバーが増えてきている。患者は自分で健康を守るという認識に立ちつつあり、自身の手で権利憲章を来年度中に作りたいと思っている。インフォームドコンセントは法制化されておりその違反には"傷害罪"が適応されるがいまだその採用はネガティブである。既存のICではなく、"診療内容を疾病ごとに規定"し、患者の要請があればその診療内容が規定に合致しているのか否かを判定する。
社会同盟や医師会鑑定・調停所に対しては"信頼性が無い"。それは損保会社が過誤を認めさせない圧力をかけていることや、医師職業規則による審判も信用できないので、"裁判を優先"する。裁判では"医療事故前の状態の把握"が重要で積極的に行っている。(これは恐らく障害とその後の生活も含めた補償を求めるために行っていると思われる)

―ドイツの三団体の訪問からの印象

1. 公的保険で90%以上の国民の医療がまかなわれ、10%足らずの高額所得者は任意保険に加入することが義務付けられている。その中で、社会同盟は低所得者の医療に関する"総合的な苦情・悩みの処理"を行っている全ドイツをカバーするもっとも大きい団体であるが未だに30箇所で不十分である。裁判に行かなくとも調停の段階でも医師側が"カルテ開示をせずに罰金を払うほうが有利"と思えば隠蔽するなどいまだ医師側の権威が守られているという実態が見られた。そのことは小さいとはいえMeyer氏の率いる患者の権利保護団体でも同じであり、既存の解決法には期待していないようである。

2. ベルリン医師会のJonitz医師は一昨年、ノルデライン州医師会の医師などとは若いということもあり、"医師会の持つパターナリズム的対応"は薄い。TQM方式などを研究しているが"ドイツ式のKTQ"による評価すら全国で未だに10病院と浸透しておらず、品質管理の客観性は確保されているとは言いがたい。

3. 医師の職業裁判所(医師2、裁判官3で構成)での裁定は医師会法で法的に規定されており、一見厳しいがあくまでも内部的評価法のきらいもあり、国民はそれほど信用せず、医師もまた遵守していないという印象を持った。

4. 北ドイツ医師会調停所の機能がもっとも一般的な対応ではないかと思われる。しかしその運営面では保険との関連もあり、鑑定など問題も多いようである。医師が鑑定を通じて関与しており、賠償と審判が一応は分離されているがSWほどの識別感は無い。 疾病金庫、調停所のいずれもが鑑定を行い自己評価を行うこと自体が統一性という麺でも問題がある。そこにさらに社会同盟などが存在するので複雑である。

5.医師職業裁判所などの審判制度は全くオープンで、第三者機構の意味が貫徹されねばいつまでも国民の満足感は得られないと考える。

   


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