「地域医療支援病院の意味と紹介率論議について」



 

 例えば、八尾市でも多数の弁膜症、先天性心臓病、心筋疾患の患者が囲い込み医療の為に数十年診断されていなかった例もある。紹介率80%以上を保障するには一般外来の分離独立化でもしない限り達成されるものではない。紹介率80%以上確保がなぜ何をさて置いても重要なのか。大病院への患者集中を訂正する為の措置と考え得るがそうだとすると患者誘導が主旨ということであり診療上大きな問題である。患者のアクセス権を一方的に制限することは粗診粗療にもつながる危険性がある。

 一方我々は4年前に“開放型病院”の認可を頂いたが今もって“登録医101名”の共同診療率は30%に満たない。その主因は個別開業による“時間的制約”、入院診療にたいする“医学的興味の喪失”である。この状況を医師自らが改善する方策(グループ診療の促進、医師免許更新制+生涯教育・自由標榜制の廃止等)を提示し、知的作業に経済的保障をつけて開放型病院での共同診療に踏み込まなければ病診連携は今と同じ糸電話の如き細いままである。

性急に紹介率のみに注目し80%以上と規定すれば直ちに実行可能な病院は“外来機能の縮小・廃止”可能な“公立病院”と従来より入院診療中心の公設・民営病院、外来機能のない医師会立病院のみである。それらの病院が地域医療支援病院の果たすべき役割を従前より行ってきたか、また果たせるキャパシティーがあるのかは疑問である。さらに今でも80%以上の公立病院は経営的に慢性赤字であり外来機能の廃止はそれに一層拍車をかけることになる。地域医療支援病院はその役割を果たしえなければ単に外来機能を極端に縮小した“地域医療孤立病院”になるのみである。同病院へのアクセスを絶たれた患者は病院診療を希望すれば何とか“紹介状”を得るために一回は診療所を訪れるか、一般病院へと流れる。このあたりが医師会の期待している点だとする意見が聞こえる。このまま紹介率に固執して根幹を無視することはこの病院の実現を阻害することになる。

 同病院の役割は地域医療にとって不可欠なものでありなおかつその診療の担い手はその地域の全ての医師であるという認識がなければいつまでも本来あるべき地域医療支援病院は実現できない。21世紀を目指した平成医療改革が決して“抜本的”となり得ないのは“経済性”優先策に起因する行政の近視眼的対応、自ら率先して地域医療基盤の矛盾点を克服出来ない医師の姿勢によるといわざるを得ない。このような医療の本質的課題に厚生省・医療審議会まかせでなく国民が自らの事として積極的に意見表示されることを期待する。

   


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