「地域医療支援病院の意味と紹介率論議について」

医療法人医真会  医真会八尾総合病院 理事長 森 功



 

 昨年末の医療法改正をうけてそれにまつわる政令・省令等が医療審議会から答申された。
現在病院は大別して大学病院等の教育・研究・高度先進医療を行う“特定機能病院”と一般病院に分けられている。保険上は老人特例許可病院も加わる。今回の改正医療法ではこれに加えて地域の中核的病院を“地域医療支援病院”と規定しそれ以外の一般病院と区別している。この病院の役割の骨子は以下のとおりである。

 すなわち、24時間救急診療を含めた急性期疾患を主体とする入院診療・開放型病院として勤務医と登録医(診療所医師が勤務医と同等の資格で病院で診療する)の共同診療を中心とした病診連携・医師免許取得後の臨床研修医のプライマリーケアー教育、及び全医師の生涯教育である。
しかし、地域医療の現場ではこの役割を果たすことを難しくしている課題が存在している。すなわち、90%以上の病院・診療所は“個別閉鎖型”であり診療内容が誰からも評価されない密室状態で“相互討論・評価”が行われ難く、医療情報処理(カルテ記載及び管理)の不備が目立つ。病診連携といっても単に紹介状でやり取りに終始するのが大半である。診療所医師が協力してグループとして診療することがその改善策であるが未だ推進策すら検討されていない。

アマチュア診療の原因という批判がある“自由標榜制=修練の如何に関わらず開業すると希望する診療科を標榜できる”での開業が主流であり、医師免許更新制という生涯教育の義務化はない。地域医療支援病院を始めるにあたって基盤にある欠陥に対する改善策がまず検討されなければならないが、実際決まった内容は“同病院の外来患者は80%以上紹介患者とする”という本旨からすれば枝葉的課題である外来制限策のみ。現在特定機能病院の平均紹介率は38.9%であり他の国立病院を始めとする基幹病院ではさらに低い。再診患者の紹介も含めて紹介率を80%以上とすることは、勤務医がかかりつけの主治医として行っている外来診療を否定することになる。診療所での医療は必ずしも標準化されたものでなく、全人的に診療されていない場合も多く、病院への専門診療の為の紹介は診療所医師の判断に任されており、患者の希望は遠慮がちにならざるを得ない。

   


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