介護保険
 

● 公的介護保険 ●

基盤整備率次第で保険料は変わる

提供:提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/

 

 10月1日から介護認定の申請受付がいよいよ始まった。
この時期に合わせるかのように新聞各紙でも介護保険の記事が毎日のように報じられている。
最近、全国紙の地域版や地方紙では、その圏域にある市町村の策定委員会や9月議会で報告された保険料試算が一覧で紹介されていることが多く、自治体間の格差を煽っている論調が目立つ。
多くの住民の関心事は自分の住む自治体の保険料がいくらになるかということであり、各紙の報道とも概ねその点ばかりが強調され、その計算過程や不確定要素まで解説しいているところがほとんどない。

 7月26日に厚生省から発表された全国平均2,885円や各地で報じらている保険料試算は、厚生省が8月の概算要求をするために各自治体に配布されたワークシートに基づいた試算である。その他、一部の府県では独自のワークシートを使い試算させているが、いずれもその入力基礎データは、昨年に実施された高齢者実態調査が基になっている。

このワークシートでは、さまざまな要素が絡み合っており、それらの数値によって保険料が算出され、結果として格差が生じるのである。
その中で保険料の算出するにあたって特に大きな要素となるのは基盤整備率である。しかし、基盤整備率が何%で保険料がいくらであるとの報道がない。これは、奥さんたちが井戸端会議で自分の亭主の給料を比較し合っているようなもので、どれだけの仕事にどれだけの時間や責任を負いながらその給料を得ているかが語られずその額の多寡だけが論じられているのと同じである。

一般読者に細かい計算過程まで解説する紙面はないかもしれないが基盤整備率と保険料の両方を比較しながら報道すべきではないだろうか。基盤整備率は、「サービス毎の利用希望率(%)×そのサービスの供給率(%)」で算出される。つまり要介護者の希望が低ければいくら供給率が100%でも基盤整備率は相対的に低くなり、必要サービス量も少なく済むことから費用総額も少なくなる。逆に利用希望率が高くても、その地域にそれを満足させるだけのサービス供給ができなければ、これもまた同様に費用総額が少なくなるのである。ここの比較を忘れた保険料の多寡はあまり意味がない。

  厚生省は、制度開始の平成12年度はこの基盤整備率を40%からスタートし、目標年度の16年度には60%まで引き上げることとしている。先頃概算要求された介護保険関係分4兆3000億円の基盤整備率は32.73%で試算されているようである。

  もっとも、ワークシートの基盤整備率も曲者で、各町とも作為的に算出されている可能性が高い。基礎となる実態調査でサービスの利用意向が少なく希望率が低く出ているところが多い。そのため保険料が低く算出され過ぎるため、供給率を100%近くまで引き上げて入力していることが多く、その算定根拠も希薄で希望的な数字であることが多いのである。

その他、介護度別対象人数も実態調査の分布からの換算値での算出であり、また調整交付金の率によっても近隣自治体との格差が生じるなど、高いだの安いだの巷間騒がれている保険料もこのようなプロセスで算出されるため、あまり神経質に一喜一憂するのは如何なものであろうか。 新聞各社にも、もう少し親切な報道を期待したい。

 

index

(本文の無断掲載ならびに転写は、お差し控え下さいますよう、お願い申し上げます。)


[ HOME ]

(C) Copyright by Reference,inc. 1997-2005(無断転載禁止)