介護保険
 

● 公的介護保険 ●


ブッフンのAOK(地域疾病金庫)


提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/


 
老人ホーム(フロアのフロント).  翌朝も相変わらず冷たい小雨が路面を濡らす中、私たちはブッフン市にあるAOK(地域疾病金庫)へ向かった。 ここのAOKでは、ブッフン、ヘルネ、ハッティゲンの3地域の約40万人をカバーしている。

  この地域で要介護認定を受け持つメディカルサービス(MDK)には20人の医師がいるとのことであった。日本のようにコンピュータで一次判定後、複数の専門家による介護認定審査会を経ての認定ではなく、専門性の高い医師が個別のケースごとに判定を行っている。1回に20〜60分だけの訪問調査で、判定まで6〜7週間かかっているとのことであった。

  1994年11月〜1998年6月までの約3年8ヶ月で、ブッフン市では10383件の認定申請があり、1/3近くの約3000件が申請却下され、驚くことにそのまた1/3の1000件ほどが裁判所に提訴されている。裁判費用がいらないこと等もあり、すぐに訴訟におよぶとのことであった。

  在宅における現物給付は要介護Tで750DM(現金給付では400DM)、要介護Uで1800DM(現金給付では800DM)、要介護Vで2800DM(現金給付では1300DM)、特に過酷な場合は、3750DMの給付がなされる。担当者の説明では、税金がかからないことや要介護Uの場合などは生活保護レベル(540DM)より多くの金額(800DM)が給付されるなどからこの地域では75%が現金給付を受けている。

  また、現物給付と現金給付双方を組み合わせて受給する事も可能である。例えば、要介護Uで1800DMのうち、外部のサービスを50%(900DM)しか使わず残りを現金給付で受け取るとすると400DM(現金給付額の50%分)が給付されるのである。現物か現金かの二者択一と理解していた小生の不勉強を恥じ入るばかりである。

  家族や親族など在宅の介護者のうち最低14時間(週当り)以上介護している者を労働者として擬制し、年金および労災保険の適用を行っている。年4週間の介護期間を限度に最高2800DMを保険料として支払っている。

  ドイツの介護保険は、生活維持や生存維持のための介護サービスの保障ではなく、介護を必要とする人やその家族に対する所得補助という性格から、施設給付などでも介護費用だけであり、ホテルコスト(宿泊代や償還経費など)はふくまれていない。

 

 在宅については、AOKの担当者の弟さんのケースを挙げて説明をしてくれた。バイク事故のため寝たきり状態となったが、車椅子やその他の補助具を使うことにより自立度が上がり介護を必要とする時間が少ないため介護度はTである。この一例のように介護認定も厳格なことなどから申請の却下も多く、この地域の介護金庫は黒字であるとのことであった。

  日本がモデルとしているドイツの介護保険であるが、国庫負担、介護認定方法はじめ現金給付など似て非なる部分が多く、先駆者の事例として即導入というわけには行かないが今後の検討課題として学ぶべき点が多いのも事実である。  



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