介護保険
 

● ドイツ介護保険の近況 その2 ●


ブッフンの介護入所施設


提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/


 冷たい霧雨の降る中、私たちはこの日の訪問先である「ヨハン・クレッパー・ハウス」に向かった。
 「ヨハン・クレッパー・ハウス」は創始者の牧師の名を取った非営利のカトリック系福祉団体が60年近く運営する完全入所型の入所介護施設である。 1995年に改築された建物は、居室、管理棟からなる地上4階と教会や多目的ホールからなる地下1階の5層建てである。  玄関脇には、外部者の利用も可能なカフェがあり、キヨスクも設置されている。

 施設のスーパーバイザーである女性の出迎えを受け、早速施設の案内をしていただいた。
 案内された4階は、ナースステーションを中心に三方へ放射線状に入所棟が続いている。 この施設の入所者155人の内この階に入所者は、各棟毎に12人、16人、15人の合計43人である。この43人に対しての介護等のスタッフは20人と日本に比べ手厚い介護体制である。それでも人手不足で痴呆対策が十分に出来ていないということである。
 居室は2人部屋が主体で、共用のトイレ兼シャワーブースを挟んで両方に部屋が配置されている。部屋では、重度の人や痴呆の人の区別が無く、やや健常の人と痴呆の人が同室であることや自立度の高い人と経管栄養を受けている人が同室だったりしている。

 その大きな理由は、そこがすでに彼らの住まいであり生活の場であることから、同居人との人間関係が出来上げっており、片方の症状がより重くなったからといって別室には移さないのだと説明された。自立度の高い人が同居人の世話をしたりしているのである。   室内は全体的に明るい基調で統一されているが、広さは特に広いという感じではなくどちらかといえばこじんまりと言った方が適切かもしれない。
 丁度昼食時であり、入所者は各棟毎の小食堂に集まっているところであった。移動式の配膳棚はコンセントから電源を取り加熱できるようになっており、パントリーで盛りつけされ、その後は食器入れとして使われているようであった。

 気になる入所費用は、介護度Vの場合だと介護費用、ホテルコスト、食費、投資費用など概算であわせて約6000マルク/月(円換算で48万円)と高い。介護保険から2800マルク、自分の年金から2000マルクでも1ヶ月約1000マルク近くは不足するのである。不足分は半分の500マルクはソーシャルベネフィット(生活保障)で補われるが、なおの不足分は息子などが所得に応じて支払うとのことであった。
 介護度Vの場合、この施設では自分の年金を支払ってもなおかつ費用をすべて賄いきれないと言う現実があった。  

 日本でも施設入所の場合、介護保険からの給付と自己負担分は年金を使って何とかやりくりをし、不足分は家族が補填することになるのであろう。
 今後多くの年金を抱えたまま施設で死を迎えることは無くなるのであろう。それに見合うだけの機能と処遇を与える施設が望まれる時期はもう目の前に迫っているのである。  

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