● 公的介護保険 ●
「保険ありてお粗末なサービス有り」は杞憂か
提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/
いま全国の各自治体では、介護保険制度における法定サービスの必要総量が試算されており、厚生省が参考に例示している介護度別のケアプランの各サービスを、対象人数で掛け合わせて総量を推計している。
当社でもいくつかの小規模な自治体のサービス総量を利用希望率40%で試算してみたところ、現状のサービス供給力はかなり低く、介護保険実施後すぐにサービス供給が出来そうにない数字が出ている。
例外的な事例かもしれないが、一例としては人口約10,500人、(高齢化率15.0%)のA町でホームヘルパーの滞在型だけでも必要量は年間約16,000時間と試算されている。これに対し、現状の供給量は社協へ委託分の年間400時間と必要量の1/40である。仮に利用希望率を10%にしても必要量は約4,000時間(ホームヘルパー3〜4人分)となり、今より10倍の供給量が必要とされる。
これに加え、巡回型(利用希望率40%)が約3,000時間が必要とされる。
もっとも現状の稼働率が異常に低いのは、潜在的なニーズの掘り起こしをせず、最小限の人たちに家事援助や声掛けを中心にしているためである。現状では、田舎町ゆえホームヘルパーに対しての利用抵抗が強く、現実にニーズが無いというのが行政側の言い分である。
この町でも、必要量を確保できるという前提で厚生省のワークシートに従い保険料を基盤整備率40%で試算すると基準額が約3,000円となっている。
しかし現実は、その保険料を負担しながら、もし今後の介護保険制度の周知と啓発如何で40%の利用希望が出たときは途端にホームヘルパー派遣待ち状況が出ることとなる。
まさに「保険ありてサービス無し」ということとなる。 逆に、現在の各サービス毎に供給可能量から提供できる範囲(参酌標準より利用頻度が減る)でケアプランを作成し、事業費総額をはじき出し保険料を試算すると保険料は1,000円位になるかもしれない。
厚生省がいう「サービス水準の低い自治体の保険料が安くなる」というレベルよりもっと劣悪な現実が生じる。 いま措置制度の下でサービスを利用している人の中にも、介護認定によって対象外となる人が生じるであろうし、また対象となった人も現行よりサービス利用回数が減るという「保険ありてお粗末なサービス有り」が現実となるのではないだろうか。
このような現実は、「在宅サービスの不足」「民間事業者の不参入」として、当社が知り得るその他の自治体でも大なり小なり同様の問題として生じている。
果たして介護保険制度は、高齢者にとってより良き制度となるのであろうか。 実施まで、あと一年を切った。これらの問題を解決しない限り、「保険ありてお粗末なサービス有り」は、現実となる。
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