介護保険
 

● 公的介護保険 ●


ドイツ介護保険の近況 その1


提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/

 
  1995年1月から導入され、日本に先立ちすでに4年を経ているドイツの介護保険。ドイツ介護保険制度のその後に関心を抱いていたところ、数日間ではあるが、3月下旬にドイツの一家庭にホームステイしながらその一端に触れることが出来た。生活の場から垣間見た介護保険の現状の一端を、一事例として以後数回にわたり紹介する。

街並み  晩冬のドイツ。12時間の長旅を経て厚い雲に覆われ冷たい小雨が降るデュッセルドルフ空港に着いた。空港では、今回の視察先をコディネートして下さったホストのステブル夫妻が機中の疲れを癒すように満面の笑みで出迎えてくれた。
挨拶もそこそこに、ボルボ740エステートの車中に身を置くとエッセン方面へアウトバーンを140キロで疾走。小一時間もしないうちにヘルネへ入った。
滞在先は、かつて炭坑や鉄鋼で栄えたルール工業地帯の一部を占めるヘルネ市(人口約12万人)である。

旧炭坑地帯ということで筑豊や夕張の情景を想像していたが、町の外観からはその面影を見ることは出来なかった。冬枯れた木立の中を続く道からは、その所々にかつての炭坑夫達の住居であった3階建ての堅牢な集合住宅が目立つ程度であった。
その一角にホストであるステブル夫妻の家はあった。外観を塗り直しているという自宅は、1880年代に建ったという典型的な炭坑労働者用の三階建住居で、かつては各階毎に炭坑労働者家族が住んでいたそうだ。

すでに20年間住んでいるというが、最近自分達で改装したということで、キッチンやダイニングは清潔感あふれ、バスルームはリゾートホテルかと見間違えるよう、またリスニングルームには、暖炉をおくなど整然とした中にも工夫が凝らされている。ノキアの移動通信関係の検査責任者である夫とインテリア店に勤める妻のセンスが窺われるすばらしい演出をほどこした生活空間であった。

 旅装を解き夕食の歓談の席で、早速彼らの世代(50歳)にとっての介護保険制度は導入して良かったのかどうかをたずねてみた。
 日本と同様にドイツでも核家族化は進んでおり、同居家族が少なく親の老後を子供が看ているケースは少ないらしい。
周知の通り制度導入当初保険料は月収の1%であったが、一年後に施設サービスが開始されてからは月収の1.7%となっている。ステブル氏は、介護保険制度を自分たちの将来にとって有効な制度であるので支持すると言い、今後2〜3%に上がっても仕方がないという考えであった。

ステブル夫妻と朝食  ステブル氏は、ちょうど階下1フロアーを貸している一老女の例を挙げて説明をしてくれた。その老女は老人施設へ入れるだけの認定を受けていながら、頑として入所しようとはしないらしい。入所すると自宅に戻れなくなるのでソーシャルサービスを受けながら近くに住む息子にも面倒を看させているということであった。彼は、制度がありながらその制度の恩恵に預かっていないその老女の息子は不幸せだと言う。
 少し話してみて分かったことであるが、彼らも老いることを常々考えているわけではないようだ。日本の二号被保険者に当たる彼らではあるが、日々の生活では身近でないことから介護保険制度の詳細について関心は薄いようであった。また、コメントをするときも間違いがないようにあくまで「彼個人の意見として」とか「一例として」といった注釈のつくことが多くあった。

 日本同様に介護に対しての関心事は目の前に迫りくるまで、他人事であるのは何処も同じであるように思われ、日本でも二号被保険者の関心が今ひとつなのは当然かもしれないとあらためて感じた次第である。
   今後のレポートは、老人施設、AOK(ブッフン市)、カリタスのソーシャルステーション(ヘルネ市)の予定。

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