![]() ● 患者傷害法の一考察 ● |
患者傷害の種類 1. 治療障害 実際の状況でその傷害が避けられたのかどうかの査定は事後に実施する。 この査定で用いられる治療の基準は、当該分野の老練な専門医または専門技術者が基準とされる。それで実施の治療に当った医師が持っている資格、専門知識・技術、経験はこの査定で考慮されない。熟練専門医が治療の場に居合わせなかった場合でも、専門医の基準が適用される。例えば、もし骨盤手術で神経損傷が発生した場合、基準として用いられるのは熟練した整形外科医であればどのように行動したか、ということである。 この査定では、査定対象になっている傷害の発生希少性や劇症度は考慮されない。肝心な問題はその傷害を避けることが可能であったかどうかどうかである。 その傷害が避けうるものであったかどうか証明する責任は患者が負う。 資源の欠如 現実に生じた事例で、現有資源の使用法の変更、または特別の追加資源の利用が可能であった場合に限り、資源の欠如が賠償の根拠として用いられる。問題の資源は医療提供機関にとって利用可能であったものでなければならない。 3.診断傷害 診断傷害とその他の患者傷害との相違点の一つは、診断傷害の場合は医療が原因でこうむった傷害でなく、元になる病気が及ぼした影響に対する賠償であることである。診断傷害は、治療が施されていない、治療の効果が少ない、または治療が遅延しているという事実に基づいている。 賠償に値する診断傷害とは、識別できる徴候が実際に存在するのに診断の際に無視されたから生じたか、またはその徴候の解釈が、当該分野の熟練専門医に適用される正常な基準から逸脱していることから生じた傷害である。 診断傷害とは、患者のもとの病気の経過が、もしその病気がもっと以前に診断されていたら、たどったであろうとされる経過とは違っている場合である。診断傷害では適切な治療が遅延したり、不適切な治療が加えられたりする結果になる。このタイプの傷害は次のように述べることが出来る:熟練した医師が最初に診断し、引き続きその診断に適合した治療が加えられていたならば得られたであろうと考えられる結果と比較すると、余分に付け加わった傷害である。 4.感染傷害 感染を大目に見ても無理でないと言う状況では感染傷害に対する賠償を受ける権利はない。この点に関しては、元の病気のタイプと病状の激しさ、患者の一般的健康状態、感染予測の可能性、感染の激しさの程度、これらすべてを考慮しなければならない。 5.事故関連傷害 この規則に関する重要な原則は、補償範囲は医療活動に関連し、かつ医療活動に特有な事故に適用されるという原則である。したがって、賠償を受ける権利はこの分野に関連した特別の事故に限定される。医療関連の状況であるかどうかに関係なく発生の可能性がある通常の事故は補償範囲から除外されている。例えば、自力で普通にうまくやってゆける患者は、病院内の普通の日常生活で発生する事故に対して賠償金を受け取るべきではない。というわけで、テレビを見たいと思い、病院内の娯楽室で躓いて倒れた患者、またはトイレに行く途中でこけた患者は介護にまつわる事故に遭ったのではない。しかし、検査中に患者が担架から落ちるとか、医療関係職員によって移動中の患者が卒倒するとか、治療に関連して発生した事故に対しては賠償金が支払われるべきである。 患者は医療関係要員と直接接触があることを必要としない。患者が事故の危険が増大している状況に置かれているだけで十分である。 6.投薬傷害 患者傷害賠償を受ける権利の除外規定 患者傷害賠償は、放置すると生命にかかわるか、ひどい廃疾になる恐れのある傷害または病気の診断または治療にとって必要な処置に起因する傷害には認められない。 この除外規定は、救急事態で処置の必要性が高く、たとえ正規の準備が出来ないときであっても治療を開始せねばならぬ場合に発生した傷害に適用される。この除外規定はまた、患者の傷害または病気に関して重大な発作をふせぐため、意図的に大きな危険を冒すことが求められる状況に適用される。
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