● 日本医大病院・顎関節手術後急死事件について ●



日本医大事件の総合的評価

診療経過の評価:時系列的にみる事が必須であり、事実関係を逐次追跡検証する

1. 済生会鴻巣病院(以下K)

 

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失恋を契機とした「うつ状態を伴う不安神経症」であったが、精神分裂病ではない。
 
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治療の妥当性
  うつ状態についての「患者家族への説明」が明確にカルテに記されていないので「自殺防止警告=Suicide Precaution」があったのか否かは不明である。   
受傷一ヶ月前からは、レキソタンというマイナートランキライザーのみの投与であったということは「精神症状は改善しつつあった」といえる。

     
2. 埼玉脳神経外科病院(以下S)
 
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多発外傷で下顎骨折等があるのに「頭部外傷をはじめとする全身的検索」がなく杜撰診療である。
 
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全身打撲による多発外傷としての認識が全く欠如しており、ミオグロビン血症→同尿症→腎不全→DIC等の進展には思いも至らなかったことは救急診療を担当するものとしては決定的な医学的過誤である。「下顎骨折に対する外科的治療のみ行う」という決め付け診断と治療は「木を見て森を見ない診療」の典型である。
 
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折角、採血データでは上記の重症化を示唆しているのに「検査データすら解読できなかった」ことは早急に再教育を要する。
 
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入院カルテを作成していなかったことは「診療契約の原則に反し、違法である」。 保管義務に従わず、本件カルテを3年で廃棄したことは信じ難い。
     
3.日本医科大学附属病院
 
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形成外科入院時の記載からして、術前はS病院でのきめ付け診断を踏襲するのみで、全身的な管理、診療は全く行われていない。
 
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12月11日の検査データは、形成外科主治医群、麻酔医のいずれもが評価せず、多発外傷後の遷延するCPK値、GOT、GPT、LDHの高値を看過している。救急科等のコンサルテーションが必要であった。
 
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11-14日の間に体内で進んでいた「多発外傷(多重骨折・打撲による筋肉傷害を伴う)によるミオグリビン尿症、SIRS、腎不全、DIC」の体内防御機構の破綻が全く留意されることなく、手術に踏み切った。
  外傷→   筋肉損傷→  体内たんぱく質の消費・減少→
病状: 転落・多発外傷 CPK他酵素上昇
ミオグロビン増加
総蛋白7→4.8
  臓器機能障害→ 免疫能低下→ 多臓器不全
  クレアチニン上昇
手術・誤穿刺・脳梗塞 の結果として術直後高熱 ミオグロビン増加+
腎機能障害   
 DIC  
 
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手術中、誤ってK-ワイアーで右下顎骨を穿通させ、右側頭葉の血管損傷→攣縮→血栓→梗塞を来たしたとも考えられる。又そのことが急性憎悪の引き金となった可能性は術直後の高熱を考えると大である。
日本医大放射線科の報告書では、「右側頭葉の梗塞はCerebral Contusion=脳挫傷」によるとされているが、梗塞内の高濃度の棒状陰影はK-ワイアー誤穿刺→動脈血栓と考える方が妥当性がある。また脳挫傷では出血があるときは点状であり、梗塞もよりいびつな形態を示すもので、本例のような楔状にはならず、梗塞巣内に棒状の血栓像を認めることも考えられない。
 
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DICを疑ってからもその専門家にコンサルトを依頼せずに脳外科医の診療に任せており、そもそも転院時からの救急外傷に対する総合的な治療は行われていない。
     
4. 日本医科大学調査委員会の見解について
  「患者は向精神薬による悪性症候群からDICを起こして多臓器不全に陥り死亡した」
「手術中、K−ワイアーによる誤穿刺はなかった」
「頭部外傷による遅発性出血性脳梗塞であった」
以上の三点が調査委員会の結論である。
     
評価:
* * この結論は、訴訟代理人=顧問弁護士の指導下に、今後行われる医療裁判での主張を前提とした可能性が大であり、医師が学術的に判断したとすればあまりにも医学の常識を無視し、非科学的、決め付け的結論の羅列である。
 
1.
悪性症候群については資料を添付する。その診断基準に照らし合わせるまでもないが、比較すればいかに大学の主張が異常かは分かっていただけるであろう。

i) 発症前7日以内に服用していたのは「レキソタン1/2〜1錠のみ」であった。このようなケースで悪性症候群の報告はない。
ii) 筋強剛はない
iii) CPK上昇、ミオグロビン尿症のような検査値の異常は高熱、筋強剛の後に生じるもので、本例とは時系列的に合わない。
iv) 悪性症候群以外の薬剤性、全身性、精神神経疾患が除外されてはじめてこの診断が許容される。本例では多発骨折を伴う多発外傷が前提にあり、酵素、ミオグロビン値の上昇、白血球上昇などが見られるから本例の診断の対象にはそもそもなりえない。
  2. K−ワイアーの誤穿刺について
CT写真の右下顎骨を連続的に見れば、骨髄中の穿刺による穴は明確に追求でき、下顎骨を穿破して脳底部に到達していることは明らかである。   
日本医科大学以外の医師は全員誤穿刺を認めている。
  3. 脳梗塞について
右側頭葉の梗塞は、血管の閉塞による「楔形の梗塞でありその中に、責任動脈の血栓による閉塞まで描出されている。この所見は脳挫傷による遅発性出血を伴う梗塞とは異なっている。
* 患者の病歴、診療歴の時系列的検証、診療工程設計管理の内容の評価を全く欠いている。
* 日本医科大学救急診療科、及び精神科の医師が真摯に検討を依頼されれば、小生の主張の正しさが証明されるであろう。
* そのような科学的検証を行わないとすれば最早「大学としての資格はない」。
     

平成13年2月26日

医療法人医真会 理事長
 森    功



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