「21世紀の八尾市の医療」



  医療経済面の分析

 表(収支費用明細書)に示しましたのは平成6−8年の八尾市立病院とA=医真会病院の損益計算結果の比較です。
市民病院の抱える課題は経営指数から見ても基本的な問題を抱えています。 人件費率の高さは民間では倒産レベルに達しています。従って労働生産性も低く損益分岐点にはとても至りません。この理由に「公的サービスを主体としている為、労働過剰で、これでも人は足らない」といわれてきました。しかし、民間と比べて在院日数が長く、専床率が高い=回転率が低く、医療者の仕事量および質は相対的にも低くなる、救急診療数が少ない、土曜日は休日、休暇は民間と比べれば相対的に多く、報酬も逆転しているなどはこの説明とは大きく異なります。

費用対効果比も著しく悪い状態では、決して健全な経営状態にあるとはいえません。医真会では八尾市が同和対策事業として始めた「安中診療所」を平成9年より業務委託を受けて運営しています。民間のノウハウでもって、職員が懸命に診療活動を行なうことにより、早期に健全経営に転化しています。以上のとおり、市民病院は他の都道府県の多くがそうであるように「体質的に破産状態」にあると言えます。もっとも、八尾市民がいいと言うのだからいいじゃないかというご意見がありますが、それはあまりにも没知的なお話でしょう。

医療需要面での分析


  公的医療は明治時代以来、国が国民の保健・衛生・健康管理を国力アップに重要と考えて整備してきました。この点は欧米とは異なり、この成り立ちの違いがその運営、医療者と患者との関係にまで影響をしてきたと言えるでしょう。たしかに、第二次世界大戦敗戦後の日本でも、公的医療の整備と国民皆保険がその後の国民の健康で活力のある生き様を保証してきました。しかし、量的に見るとあくまでも民間の医療機関が日常の診療を提供してきました。

 さて、現在、八尾市民病院に市民はどういう医療を期待しているのでしょうか。全ての八尾市の医療機関を束ね、最も高度な医療を、24時間・365日提供することでしょうか。歴史的に見てもそのような需要は主張されたことはありません。

 伝染病はどうするのか、という指摘があります。そのため八尾市としてはどのようなハードが必要なのか過去の資料からシミュレーションする必要があります。そのうえで、八尾市からの助成をいただけるならば民間でも診療は十分可能です。むしろ、急性期精神反応などへの精神科救急対応施設、小児救急への支援、覚醒剤などの薬物中毒対応システム、HIV対応施設支援などが公的助成を要する部門でしょう。

 病院医師の実際の人事権は院長、市長にはなく、関連大学にありますが、その派遣医師群は必ずしも八尾市の地域医療が主眼ではない場合もあり、地域でのチーム医療に積極的でなかったという過去の実態があります。

 一方、八尾徳洲会病院と医真会八尾総合病院は急性期型、総合、教育研修病院です。地域医療の観点からはこの二つが中核病院として機能しています。

 医療需要の面からみても私たちは市民病院は不要ではないのかと考えます。もっとも、その結論は八尾市民ご自身がお考えになる課題ですが。

以上のような改革と実践は八尾市、中河内地域の医療・福祉がより高いレベルを目指すことを保証するものと思います。医師に許されたProfessional Freedomとはこのような行動を通じて名実ともに「医療は安心して医師とともに進めうる」という事を住民に熟知していただき、知的な信頼の上にお互いが努力することであろうと考えます。

 小生の提案を検討していただき、活発な討論が医師会でも行なわれることを希望します.とりわけ拡大された八尾市医師会理事会では決して「無視や浅薄な検討」に終始することなく真摯に取り上げていただきたく、あえて12月の理事会に提出いたす次第です。 さらには、平成12年1月21日に予定されています、医師会長ならびに執行部の選挙に立候補を予定されている先生方には個人的見解としてご検討・ご回答いただきたくお願いいたします。

 なお、本提案はその趣旨からして公開されてしかるべきものと思います。小生のホームページを通じて本文を一般市民に公表いたす所存です。

   


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