介護保険
 

● 公的介護保険 ●

チョット矛盾しているのではないですか?

提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/

 
 

 某県でのこと。
 当社がお手伝いをしている案件で、ある知的障害者の通所授産施設の新規開設で相談したところ、次のような指導を受けた。
 当初の計画では、敷地面積等の関係から定員20名で進めるつもりであったが、「採算面から30名以上でないと、経営が苦しいですよ。出来れば30名で計画できませんか」という指導であった。

 確かに、これまでの経験則から適切な指導であろうかと納得する一面もある。しかし、平成11年10月に出された「社会福祉基礎構造改革」の中にある社会福祉事業の充実・活性化では、社会福祉法人の設立要件の緩和や地域におけるきめ細かな福祉活動を推進するための事例として、障害者通所授産施設の規模要件の緩和を打ち出している。  

 定員の「20名以上」を「10名以上」に引き下げるというものである。 20名でやりくりが大変であるという現実があるのに、一方では、10名の施設を認めようとする。その分、運営に必要な措置費を上げるという話ではない。

 その他、痴呆対応型共同生活介護事業(痴呆性高齢者グループホーム)についても、「指定基準の運用事項には、単独型の生活住居については、地域の住宅地にあることが望ましいこと」とあるが、その現実は、施設併設型でやっと見合うような介護報酬単位が設定されており、住宅地の単独型では採算を取ることが非常に難しくなっている。

 21世紀を見据えて地域における福祉活動を推進しようとしながら、その事業が成り立つような財政的配慮や支援に欠けているのではないか。今まで同様に篤志家の寄付や善意を大前提に、社会福祉事業を考えているのではないか。いくら設立規模要件等の緩和がなされても、実際に運営が困難なことから県の指導が入り、現実的には無理であるとの判断がなされ、事業が出来ないのではないか。

 この4月から施行された訪問介護の現実を見ても、机上の報酬単価と現実の乖離は大きく、折角介護の社会化を唱いながら、利用抑制が働き、「介護保険になって良かった」という利用者の声は思ったほど聞かれない。

 生んでも育てようのない社会福祉事業では、これからの高齢社会を迎えるにあたり不安が増すばかりである。昔から子育てでよく言われるように「小さく生んで大きく育てる」という考えのもと、これからの社会福祉事業の育成の在り方を、厚生省の優秀な頭脳で答えを出して欲しいものである。

 

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