介護保険
 

● 公的介護保険 ●

ケアマネージャー 実務研修体験記

専門職種別体験レポート

GPネット8月号掲載
     提供:さくらいクリニック   院長:桜井 隆


  「やっぱり医者は介護支援専門員からはずしといてくれたらよかったのに。。。」  
 最初に医師も介護支援専門員の資格を取れる、と聞いたときから思ってたことだ が。”だったら資格を取らなかったらいい、”と言われるだろうが、取れないのと 、取れるのに取らないのとは若干意味が違ってくる。まあしかしまもなく介護保険 はやってくるし、介護支援専門員はとりあえず必要だ。前向きに考えていくことに しよう。

実務研修を受けて


 講義は予想どおりたいくつなもので、講師の中にはよくわかっていないような人も いて受講者からのブーイングも聞かれた。それぞれ業務が忙しい中、6日間もつぶ してかなり遠い研修会場まで行かされ、(といっても我々都市部のものはまだまし 、遠い方は泊まり込みだ、)もう一つすっきりしない講義を聞かされたんではたま らない。私も後期研修で、平日2日を休診にして参加せざるおえなかった。しかし 講師の方も大変といえば大変。誰もが全く未経験の制度について説明しないといけ ないからだ。しかも厚生省レベルで未決定の事項も多く、講義に対するブーイング は講師自身にではなく厚生省に向けられたものだったに違いない。
兵庫はまだ80 00円だったけど、この受講料も福岡のただから大阪の2万円までとさまざまで、 介護保険の保険料やサービスもやはりこのような地域差がでてくるのでは、と心配 になる。私の場合受講したアセスメント方式は、日程の関係で選択に全く余地はな くいやおうなしに社会福祉士会方式。おそらく将来的にはアセスメントにもコンピ ューターを使用することとなるだろうから、できるだけ入力しやすいシステムを選 びたかったのだが。。。
ふだんあまりきっちりカルテを書いていない?私にとっては 記述する項目が多くてとても大変だった。それにしてもこのアセスメント方式、ど の方式を用いるとしてもかかる労力に比べて得られる結果としてのケアプランが、 実際に現在経験的に行われているものとあまりかわらない様な気がした。確かにケ アプランに科学的客観性を持たし、利用者への情報開示にも耐えうるEBC, Evidence Based Care を目指すためには必要な手順なのだろうが。同じEでも Experience(経験)やEconomy(経済)に基づいたケアにならないように気をつけね ばならない。

介護サービス計画の実習

 要介護度と介護報酬、そして現実に利用できるサービスのことを全く考えないでつ くるケアプラン。本当にこんな卓上のプラン通りのサービスを提供できるのなら、 介護支援専門員って利用者にとっても感謝されるいい仕事なんだろうけど。おそら く利用者の予想よりかなり軽度の要介護認定、介護報酬によってそのつど発生する 1割負担、相変らず不足しているサービス。。。
いろいろ現実を考えるとだんだん気が 重くなってくる。認定決定までに予想して暫定サービス提供を始めてはみたものの 、結局自立の判定、全額自己負担となってしまい、利用者とサービス提供サイドか ら不満をいわれて立ち往生。。。なんてケースも出てくるだろう。もちろん基本的 な考え方として理想的なケアプラン作成を練習することは無意味ではないだろう。 次のステップとしてさまざまな制約、特に経済的制約の中でケアプランを実行して いく力量が介護支援専門員には必要だ。それは2000年4月から On The Job Trainingでやっていくしかないようだ。意見交換でふだんあまり顔を合わせること のないさまざまな職種の方と同じテーブルについていろいろな情報交換できたこと はこの実務研修の収穫のひとつだ。今まであまりうまくいっているとはいえない福 祉、医療の連携が介護支援専門員同士の個人的連携の輪から広がっていく可能性は あるだろう。そのためには各々の介護支援専門員が所属する施設のサービスを提供 するためでなく利用者主体のケアプランを考える必要がある。

介護支援専門員はなぜ独立できないのか?

 介護支援専門員は法人格を有し、都道府県の指定を受けた指定居宅介護支援事業者 に所属して働くこととなる。個人で独立してケアマネージメント業務を行うことは できない。介護支援専門員が介護保険という新しい社会制度の中で重要な役割を果 たすのなら将来的には独立して個人でケアプランの作成が可能なシステムが望まし いかもしれない。そうすることによって真に利用者主体のケアマネージメントが可 能となるような気がする。すべての介護支援専門員が他の資格保有者であることと 、ケアプラン作成のコスト、収入の問題がネックとなるのだろうが。資格として魅 力のある条件の一つに個人で独立できる、ということがある。介護支援専門員も将 来は自立できるほうがいいかもしれない。

自分でたてようケアプラン

 本当に利用者の主体性を尊重し自立をうながすということを推進していけば、利用 者は自分自信で自分のケアプランを作成するということが真の自立といえるのでは ないだろうか。最初はよくわからないので旅行社のおまかせパックツアーを利用し たとしても、2回目、3回目は自分で納得の行くプライべートツアーを自分で企画 する、これが真の主体性を持った自己決定、自立だろう。ケアプランなんて自分で 作るのがあたりまえよ、という時代はそう遠くないかもしれない。その時介護支援 専門員の仕事はどのようになっているのだろうか。

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