介護保険
 

● 公的介護保険 ●

ヘルネ市のソーシャルステーション


提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/


 
老人ホーム(フロアのフロント).  ドイツに滞在している数日間は、毎日のように冬空を思わせるどんよりとした厚い雲に覆われ、つねに傘が手放せない程度の小雨が降る天候であった。異国の雨もそれなりに周囲の景色と相まって風情のあるものではあるが、たまには太陽の顔が恋しく思える。そんな願いもむなしくまた雨に迎えられた朝、ヘルネ市のダウンタウンにあるソーシャルステーションに向かった。

  訪れたのは、ヘルネ市(約10万人)の諸団体合わせた22ヶ所のソーシャルステーションのうちダウンタウンにあるカトリック系のドイツ・カリタス連合が運営するソーシャルステーション。  ショッピング街のメイン通りから少し中へ入ったところにカリタスのオレンジ色のロゴマークが控えめに付いた事務所である。

 管理者の説明によるとスタッフは、看護婦、看護士や兵役免除のボランティアを併せ全体で35人で16台の訪問専用車を整備しており、現在このサービスステーションを利用している人は156人。最低でも130人以上のクライエントを確保していないと採算(年に約2000,000DM=16,000万円程度)割れをするとのことであった。 (1DM=約80円換算)

  ここでも介護保険制度の導入されてからは多くの民間が参入し、競争が激しいとのことであった。民間が参入するためには、資本80000DM(約640万円)と管理者として3年以上の経験があれば4人のナースで始められる。

 民間サービスの多くは、基本サービスを格安で受け、家事援助など単価の安いサービスはあまりやりたがらないらしい。たとえば基本的なサービスで20分が標準とされている全体のケア(入浴、口腔ケア、ひげ剃り、肌の手入れ、髪の手入れ、爪の手入れ、着脱、片づけなど)について、カリタスは31.98DM(約2560円)で提供しているが、ある民間の事業者では、28,70DM(2300円)と1割ほど安い。ただし、民間事業者は時間厳守で20分のサービス提供は20分でうち切られるということだ。一方、カリタスでは同じサービスを少し高く提供しているが、20分だからといってうち切るわけではなく、質の良いサービスを提供するために若干の延長もあるとの説明であった。

 

 このように競争が激しいことから、カリタスもサービスステーションの認知向上に努めている。サービスを書いたパンフレットはもちろんのこと、ボールペンや鉛筆といったノベルティまで用意し、市民に無料で配っている。スタッフもカリタスのTシャツやトレーナなどのユニフォームを着て活動する。

 とにかく民間参入が進んだことで、ドイツ・カリタス連合という歴史があり全国的なビッグブランドでも生き残り競争に力を入れていることが印象的であった。日本でも、民間参入で質の向上を伴う競争により、多くのサービス事業者がよりよいサービスを提供してくれるような介護保険を望みたい。 


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