福祉施設

 
まだまだあるこんな施設


提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/

 
 
 先日、開設数年というまだ歴史の浅い、ある介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の運営責任者と話をする機会があった。
 最近は、高齢社会の進展や介護保険制度の施行などの時代的な背景もあり、この福祉分野に職を求める若者が多く、施設運営や要員の確保という点では喜ばしいことである。
 ただ、彼曰く「最近の傾向として、福祉をなめている人が多い」という。つまり、一般の企業では勤まらないけれど、高齢者相手の福祉施設なら何とかなるという安易な気持ちでこの世界に入ってくる若者が多いという。

 サービス業や営業、販売など一般の企業を経験せずに純粋培養された「福祉君」が多く、 自分たちの時間が優先し、入所者や利用者の処遇は二の次で、何の疑問も抱かない職員が多いらしい。俗に言う「気働き」がなく、指示されたことをこなすことしか頭にないらしい。

 たとえば、デイサービスで職員のお昼の休憩時間は、痴呆性老人が徘徊しないように部屋に鍵をかけ閉じこめているという。その理由とは、みんなで一緒に食事を取るので、うろうろされては落ち着いて食事が出来ないからだという。
 そもそも、交代で食事をするという発想がない。あるいは、鍵をかけないまでも利用者が部屋を出たなら誰かが気にかけていれば良いものを全員が同じでないと済まないらしい。みんなが仲良しクラブになっており、注意しても「以前からそうでした」と、改善しようとする気がないらしい。

  その責任者は、数年前に他の施設から赴任してきており、その施設の当初からの雰囲気を変えるのためにかなりのエネルギーを費やしているという。
 また、別の施設では、オムツを2時間ごとに定時交換しており、オムツの交換回数がケアの質だと思っているところがある。聞けば、夜中の寝ている時間にも2時間ごとに起こしてオムツを交換しているという。故に、職員はオムツ交換が一巡するとすぐに次の交換時間がやってきて、一日中オムツ交換に携わっているらしい。

 本来ならば、入所者ごとの排泄パターンを把握・管理し、必要な人ごとに随時排泄誘導をしながら、オムツはずしを試みるべきである。しかし、これが大変手間のいることであることから、前述のようなオムツ交換が定形化するのである。
 これらは、施設の歴史がないということだけではなく、開設時から理事長や施設長が理念を浸透させる努力を怠ってきたこと、またそれを具体化するべき現場主任の力のなさ、職員が新卒者ばかりで経験がないことから発生したものであることが多い。

  しかしながら、いつしかこれが普通になり、他の施設でどんな工夫がなされているかなど、介護の質の向上等を求めて創意工夫をすることが少なくなったことを物語っており、それが冒頭の責任者の嘆きになるのである。
 もちろん、彼は嘆いているだけではなく、それを一日でも早く改善しようと日々若い職員達を指導しているのはいうまでもない。

backback

(本文の無断掲載ならびに転写は、お差し控え下さいますよう、お願い申し上げます。)


[ HOME ]

(C) Copyright by Reference,inc. 1997-2005(無断転載禁止)