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● ある町の高齢介護者の現状 ●


提供:(株)マチュールライフ研究所
http://www.cyberoz.net/city/maturenet/

 先頃、介護保険事業計画策定の一環として、受託先の自治体で数人の介護者を対象にヒアリング調査を実施した。
高齢者が高齢者を介護するという現状の一端をご紹介する。

ケース1:介護者:妻(71歳)、被介護者:夫(73歳)、要介護度4、介護期間4年
 ご主人の体格が良く、オムツ替えなどがたいそうで困っている。特に大便の始末は、息子と2人がかりで処理している。主人からの感謝が無く、介護疲れがありありと見える。

ケース2:介護者:義妹(64歳)、被介護者:義姉(73歳)要介護度3、介護期間2ヶ月
 若い頃から義姉と同居しており仲が良く、義妹がこまめに面倒を見ている。義姉の「おおきに、すまんな」という言葉に救われるという。近所に住む実妹や親戚に理解が無く、家族介護が当たり前だと、ホームヘルパーなど外部の手助けが利用できない。デイサービスに行かせているだけでも、楽をしているといわれる。周りの人から介護の苦労を少しでもいたわって欲しいと望んでいる。

ケース3:介護者:嫁(59歳)、被介護者:姑(87歳)要介護度1、介護期間3年
 痴呆症状から、「嫁が私の着物を親戚にあげている」などと悪口を近所に言いふらす。昔から嫁いびりが激しい。毎日のように、農業で使う地下足袋などを無くしたと思いこみ、近所であたらしく購入する。間違えて人の畑で仕事する。目が離せない。主人の理解がない。デイサービスで預かってもらっている間が、一時の休息である。一日中一緒では疲れると訴える。

ケース4:介護者:夫(73歳)、被介護者:妻(72歳)要介護度2、介護期間10年
 自宅が寒く、冬場は病院へ入院させている。自分自身も歳を取ってきており、掃除、洗濯や食事など日常のことが大変になってきている。老齢基礎年金だけで、2人で月額7万円ほどでは生活がやっていけない。医療費も上がり自分の病院代さえも負担になっている。生活保護を申請したが認められない。この上、年金からの介護保険料の負担はこたえる。週1回、入浴のためのヘルパーをお願いしているが、これ以上無理を言っても、都合もあるだろうからと思って訪問回数を増やすお願いはしたことがないという。

ケース5:介護者:息子夫婦(76歳、73歳)、被介護者:養母(94歳)、要介護度5、 介護期間4ヶ月
 3世代同居の8人家族であるが、高齢の息子夫婦が世話をしている。その妻も両足が悪く身障3級。週一回のホームヘルパーを利用。ショートステイを繰り返し利用。送迎の車両だけでなく運転手もつけて欲しい。近隣の町では送迎してくれている。出来れば施設に入れたい。自分の時間がなくなり負担となっている。こちらが持たない。旅行なども行けなくなっているという。

これらのケースでそれぞれに共通しているのは以下の点であった。

 1. デイサービスが家族にとっても有効な方法であること
 2. ホームヘルパーの訪問増を近隣や親戚の理解がないためにためらっている
 3. 夫の心的な援助やいたわりがない
 4. 申請主義の弊害や制度を知らないため特別障害者手当など受給していない
 5. 元気な頃の人間関係が、その後の介護者と被介護者との関係を良くも悪くもしている

いずれも一時間ばかりの短い時間でのヒアリングであった。しかし、介護者にとっては、私どもと何の関係もしがらみもない気楽さからか胸の内をさらけ出し、愚痴を聞いてもらえたという精神的な開放感があったように思う。介護者には、日頃の苦労を聞いてもらえる機会が必要であろう。

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