医療記録の開示
 

● 私がカルテの開示をすすめたい理由とできない理由 ●


提供: 提供:さくらいクリニック 院長 桜井 隆

“カルテ”という妙な言葉にはなんとなく秘密めいた、そしてうさんくさい響きがする。外来診察の時には患者のすぐ目の前の診察机の上に、入院中はナ一スステ一ションのカウンタ−越しに手を伸ぱせぱとどきそうなキャビネットの中にある自分のカルテが患者はどうして自由に見られないのだろうか。その近いようで遠い距離が患者と医療者の間の距離のような気もする。

力ルテをめぐる医師・患者の構図

 カルテに書かれている医療記録、診療情報といっても大きく分けて3つの情報の種類が考えられる。まずは検査結果、X線写真などの画像、処方薬といった客観的データ。そして患者をめぐる医療行為について医療者が私見を交えて書いた記録。最後に診療報酬にかかわる数字。ある患者のカルテには基本的にこれらのデータが記載されている。

 いわゆる“守秘義務”によって医療者は知リ得た患者に関する情報を勝手に公開できないことになっている。では自分自身のカルテを自分で見ることに関してはどうだろうか。カルテの開示について日本でも最近ようやく議論が高まってきた。おまかせの医療から納得して選ぶ医療へ、いわゆるインフォ―ムドコンセントの展開に診療情報の開示は欠かせない。情報を共有できなければ埋解も選択もありえないからだ。そこには診療情報を介しての患者と医療者の連携が必要となってくる。“患者と医療者の連携”と聞いて違和感を持つとすればそれは従来のパターナリズムから脱却しきれていないということだろう。連携するには立場が対等である必要があるからだ。

 残念ながら現状はみなさんご存知のとおり、連携どころかわかリ合える言葉で話合えるかどうか、というレべルの間題である。学術用語や略語を連発しての説明「みぎかはいやにしゅりゅうじょういんえいがありはいしゅようがうたがわれるのでぶろんこをしましょう」と言われて「はい、わかリました」と言うしかない患者さん。こんな構図は極瑞な例だろうが....。
 診療情報を開示するとして、カルテの診療情報を前述の3つに分けて考えてみよう。

検査結果・画像所見・クスリの内容など

 これら患者についての客観的データに関するかぎリ、開示は無条件に行なわれるべきと私は考える。現在、患者が自分の血圧の値や血液検査の結果を知ることは比較的容易になっている。私は検査結果はすべてコピーを患者に渡し、さらに検査会社とオンラインで接続されたパソコンにすべてのデ−タを入力して過去のデーターとの比較や時系列をプリントアウトしてそれも渡している。
 それらの情報を有効に利用するためには医者の説明だけてなく患者自身の努力も必要となる。さらに患者の理解を助け、疑問を引き出し、必要なら医者に質問を投げかえすサポートをするのに看護婦の果たす役割は大きいと思う。
 レントゲンなど画像所見はそれを読影してはじめて情報となる点で少し異なってくる。患者が画像データーを得た場合、それを専門家に読影してもらって(セカンドオピニオンを得て)こそ意味がある。

クスリの内容について

 このクスリの情報開示が手始めに一番簡単でしかも重要と考える。何のクスリかわかって飲む、ただそれだけのことだが、実際にはかなり困難なことのようだ。一方で「医者からもらったクスリがわかる本」がべストセラ−を続けている。せめて自分の飲んでいるクスリの内容を知リたい。という患者の要求に医者や薬剤師は対応できていないのである。医者や看護婦で何のクスリかわからずに飲んでいる人は一人もいないだろう。

 私は開院当時からクスリの商品名、効能、効果、用法、副作用を簡単に記した紙をおのおののクスリにつけて処方し、すべての患者に何のクスリかわかって飲んでいただくように心がけている。さらに待合い室に当院で使用しているクスリの添付文書と、わかリやすいクスリのしおりを公開している。
 平成8年4月から薬剤情報提供料が算定可能となった。これは2つの理由で評価できる。1つは“情報”に対して報酬が支払われること。もう1つはクスリに関する情報の重要性が評価されたということであるが、残念ながらその情報に副作用は入っていない。これだけ薬害がさわがれる今日、患者が一番知りたいクスリの情報は副作用に決まっている。

 いずれにしても実際飲んでいるクスリについての情報は無条件で患者に知らせて当然と考える。実際クスリの公開をすすのめていくと患者自身が自分に合ったクスリを選択してくれるようになり、「先生、この前もらったあのクスリ、○○○がよく効いたからまたちょうだい、同じ症状やねん」となる。医者は医学的に許容できると判断すれば患者の希望どおリのクスリを処方すれぱ良いと思う。               

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