ホスピス
 

● がんで死ぬのも悪くない ●


がん入門講座講演 1998年9月12日
提供:だいとう循環器クリニック 院長 大頭 信義

がんが恐いといわれるが、がん以外にも恐いものはいくらでもあります。
飛行機が恐いから乗らないという人もありますし、いろんな事故が恐い。車の恐い人もあります。ぼけも恐いし、生れつき障害を持って生まれるのも恐いでしよう。がんのことを知らないから恐いという風評が立ち、実際以上に恐いと感じてしまう人があるのです。がんを取り巻く様子が変わってきているという情報を知る事がいちばん大切です。

 がんという病気には誰でもみんななります。うちの家系はがんにならない、というのはごく僅かです。がんは遺伝子が決めているので、年を取るとしようがないことです。それでもがんが恐いのには大きく分けて2つの理由があります。
一つはすぐ死ぬかもしれないということです。予定より早く死ぬのが恐い。30歳代で亡くなられた患者がありますが、これは非常に理不尽、不幸と思われます。しかし70歳代ならいい、ということにもならない。
二つ目は急速に死が迫ってくるかもしれないということです。それと痛みを中心に、非常につらい苦しい思いをするという点があります。人が死んでいく 経過の中では、周りも家族も本人もつらい思いをし悩むのは、どうしても避けられない。それ以上にがんにそういう面があるとすれば問題だが、少しずつ解決されてきています。たとえば10年くらい前までのがんの療養と比べると違ってきています。

 日本人の寿命は年々延びています。百歳以上のお年寄りは25年前にはわずか153人でした。それが昨年には8,491人に、今年10,158人になりました。平均寿命も延びて世界一になりお目出度いことですが、同時にがんになる率も増えてきます。70歳は60歳と比べると、同じ人数いればがんにかかる人が増えます。例えばクモ膜下出血は40歳代が多く、50歳代を過ぎるとうんと減ってきます。このようにある年令にピークがあって減るものもありますが、がんは後になるほど増えていきます。これは生物学的に仕方の無いことと認める必要があります。

 どういうがんになるのか。5月にWHOが発表した世界がん羅患と死亡の統計数字によると、死亡数の順番で次のようになります。
 一位は肺がんで日本もトップになってきました。煙草が原因。専門家は日本の住宅が洋式化し、窓にアルミサッシが増え、煙が出なくなったことを上げています。車の排気ガスよりも煙草の方が原因としては多いのです。煙草の、横にたなびく煙がアルミサッシで部屋から出ていかない。これで本人だけでなく家族も影響を受けます。その証拠に熟心に煙草を止める取り組みをした、フインランドやアメリカで激変しています。日本は増加の一途で、TVの宣伝を許しているのは日本だけのようです。

 2番目は胃がんです。これは発展途上国のがんです。まだ末開発の国は増え続けていますが、開発が進んだ国は滅ってきています。検診が進んで早く発見されたというよりも冷蔵庫が普及し、食生活が変わって塩気の少ないものをとるようになった結果です。
 大腸がんは反対に先進国に多いがんです。肉の多い野菜の少ない食事が原因になります。
肝臓がんの9割はピールス性で、中国で増えているという報告があります。
 乳がんも先進国型のがんで、ホルモンの影響や、動物性の脂肪分のとり方が原因です。
 食道がんも煙草を吸う、強い酒を飲む食生活の影響です。
 口腔がんは日本であまり多いものではありません。
 子宮がんには体がんと頸がんがあります。頸がんには感染が関わっているようです。子宮頸がんの人を調べる95%くらいにピールスがみつかるので、関係があるとされています。入浴の頻度が多いところには子宮頸がんが少ないようです。

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